実用性を重視した悪役令嬢
その男性、いや、その女性が痛みから目を覚ましたのは深夜になってからだった。
彼女の名前はジュリエッタ・フォンデンブルク。名門フォンデンブルク公爵家の長女であり、乙女ゲーム『バラ色の青春に送る花束』の悪役令嬢である。
しかし彼女はそれを知らない。それはなぜかというと、彼女はゲームをしない人間だったからだ。いや、正確にはビデオゲームやPCゲーム、スマホゲームもやったことがない。
そもそも彼女はスマホが世に出回る前に死んでしまった。じゃあなんで彼女が乙女ゲームの世界に転生してしまったのかというと。
彼女の前世の名前はケイン・スミス。
1970年代から1990年代にかけてのアメリカで殺し屋をやっていた。マフィアの抗争があると呼ばれるような、有名なヒットマンだったのである。
彼は女性と子供はこっちからは一方的に殴らないし殺さない、相手がこっちに敵意を向けてこない限り、という信念のもとにマフィアからもらった依頼を淡々とこなしていた。
彼が殺し屋になったきっかけはそれこそ些細なことだった。
ミドルスクールに入って間もないころ。
学校から家に戻るといつものように、父が母を殴っていた。彼は白人でもただの工場労働者で無学で、神経質な雰囲気の家庭で育ち、第二次世界大戦でナチスドイツ軍を相手に銃を握った。
戦場から戻った彼のPTSDは日に日にひどくなって、やがて家族に向けて何の前触れもなく暴力を振るうに至った。
妹は実際に父に殴られて死にそうになったことから母方の祖父母が引き取って、家には父と母とケインの三人だけとなった。
ケインは日常的に父の暴力にさらされていたが、不良のような生活をするようになった。煙草を吸い、お酒を飲んで、夜まで車を持ってる奴の車で走る。
喧嘩も頻繁に起こしていた。そしてケインは夜の11時になるまで外で遊んで手から家に戻った。母親が殴られていて、ケインのポケットには折り畳み式ナイフが一本あった。喧嘩相手をボコってからそいつから取り上げたものだ。
そしてケインは、その日は我慢する気が起きなかった。彼がこの家を支えているが、俺だってやろうと思えばできなくもないだろうと。
ケインは父を背中から刺した。一回、二回、三回、四回と刺した。研ぎ澄まされた刃はいとも簡単に肌を貫通し、筋肉を貫通し、脂肪を貫通し、内臓に至ってはそれを傷つけることができた。
父は悲鳴を上げた。だがケインはやめる気がなかった。父の上に馬乗りになって、今までたまった鬱憤を晴らすかのように殴りつけた。
彼の中で何か人として一般的に持っているものが崩れていった。
ケインは父の車に母とともに彼の遺体を乗せた。市街まで運転をした。運転には慣れていた。
やがて雑木林にたどり着いた二人はスコップで穴を掘って、死体を埋めた。
ばれることもなく、二人はその日のうちに母の祖父母のところへ向かった。州の境界を跨ぐと失踪者を持つ家族なんて気にもされないものである。たとえ戦争ベテランであっても、科学捜査もそこまで発達していなかったのだ。
ケインは交友関係をすべてなくし、収入なんて当然あるはずがない。祖父が都心部で時計屋を経営しているが、それもどこまで持つか。
そしてケインは別段心を改めることはなかった。彼の中には何かがなくなっている。
人生なんて所詮はそんなもの、という気持ちがあった。誰も気にしちゃいない、誰も考えちゃいない、世の中を動かしているのはお金でしかない。
そのように価値観が形成されてから殺し屋になるまでそう時間はかからなかった。彼には才能があった。無害を装って近づき、目にも見えない速さで拳銃を抜いて撃つ。
慣れればどうということもない。
ケインが活動していた時期はマフィア同士の縄張り争いはそこまで激しいものではなかったが、いろんな薬やら裏カジノ事業やらで新たな市場が次々と開拓されていた。マフィアの利権が膨れ上がるにつれ、小さいいざこざは耐えることなく起きて、大きな金額が動くだけにそれをどっかの時点でかっさらうような輩も少なくなかった。
そういう時は手本を見せる必要がある。
裏には裏の秩序があった。彼はその秩序を表側の警察のように憲兵のような役割をして守っていただけだった。
一般人は殺さない、家族もろとも殺す必要がある時も女子供は敵意を見せない限り殺さない。
自分の中にあるルールを守りながらケインは殺し屋になって30年間、100人以上のチンピラやギャング、マフィアやその親類縁者を殺しながら生きていた。
だがそんなケインにも終わりが近づく。葉巻を愛用していいたケインだったが、肺がんと診断された。それも今の医療技術ではどうしようもできないと。
幸いというべきか、彼に家族はいなかった。
いい人生ではなかったが、悪い人生でもなかった。好きな車に乗って、好きな洋服を買って、おいしいものを食べ、それなりの数の女を抱いた。
ケインは身辺を整理し、気まぐれに旅に出た。冷戦が終わって間もない世界を自分の目で見たかった。中国、東ドイツ、ロシアを回った。思っていた以上に肺の痛みがひどくなったのでアメリカに戻ることもできずロシアからそのまま日本行きの飛行機に乗った。なぜ日本に向かったのかというと、ロシアで死にたいとは思わなかったから。大した理由ではない。
彼は空港から降りてすぐに近くにある森の中に行けるところまで行って、ナイフで手首を深く切った。これで死ねる。がんの痛みから解放される。
彼の遺体が発見されたのは、それから20年後。宅地開発が行われ、森が伐採された。身元が明らかになるにつれ本のひと時世間を騒がせた。裕福なアメリカ人男性が森の中で自殺していたのだ、そりゃ何かがあるのではないかと勘繰らないほうがおかしい。
彼には家族がいなかったのでそのまま火葬され、灰は大使館を通して本国へ向かったということになっているが、本国ではFBIが彼を知っていたのである。
裏では有名な殺し屋で、肺がん末期だったことまでわかっていた。
家族もなければ戦争ベテランである父親を殺した疑いまであったので、灰は近くの森に適当に捨てられた。
そしてそうやって適当に捨てられた灰があった場所はなんと、どこかの女子高生が埋めたタイムカプセルのすぐ上だったのである。
その中には乙女ゲーム『バラ色の青春に送る花束』も入っていた。
そんな神のいたずらかこいつ正気かと疑ってしまいそうなことが起きて、ケインはその乙女ゲームがモデルにしていた世界に悪役令嬢として転生してしまった。
13歳になって間もないある日、ジュリエッタ・フォンデンブルクは公園を散歩している途中、大型犬に押し倒されて気を失った。犬はジュリエッタが食べていたお菓子を夢中になって食べるだけで別に嚙みつくことはなかったが、公爵家の令嬢を傷つけたことから殺処分された。
ジュリエッタは目を覚まして考えた。自分はどうやら過去の世界に生まれ変わったらしいと。彼はそこまで教養がある人ではなかったし歴史はからっきしだったため、外国と言ってもジュリエッタは冷戦の時のロシアと同じ英語を使うイギリス、麻薬を運んでくる中南米しかしらない。
つまり欧州の過去とかまるで知らないのだ。なので彼はここが実際の欧州だと思い込んだ。過去にタイムスリップして生まれ変わったのだと勘違いした。
この世界には魔法もあったし自分も使えたが、多分近代化で失われた技術の類なんだろうと思うことにした。
地図を見ても、きちがいでくず野郎であるコロンブスの奴がまだ新大陸を発見していないのだろうと思っているだけだった。明らかに違うが、多分昔の人はそう書いていたはずだと。
彼女はここが乙女ゲームの世界だなんてつゆほども、いや、そもそもの可能性として彼女にはその認識すらなかった。
そして都合の悪いことに、この世界にはもう一人転生者がいた。ヒロインである。平民出身で男爵家に魔力量が多いことから引き取られ、というテンプレ設定のヒロイン。
彼女は別に頭のおかしい女性ではなかったが、成り上がりたいとは思っていた。悪役令嬢の婚約者である王太子を捕まえて、王妃になって内政無双がしたいと。
だがそれはあまりにも場違いな転生者により根本から無残に砕かれることになる。
ところでアメリカの文化では貴族制を描いた作品なんて、それこそ一部のニッチな需要しかないので見つけるのに相当苦労する。
それはなぜか。現代を生きるようにしているから、過去なんぞに気を配ってないとの理由と言えなくもない。
今でも様々な人間模様があるのにわざわざ時代をさかのぼるなんて面倒なことをするのはgeekかnerdぐらいである。
nerdたちもファンタジーよりスーパーヒーロージャンルのコミックスを好む。魔法はD&D(Dungeons and dragons)のおかげでイメージとしてあるが、それだけである。貴族?身分?アメリカにも当然ながら生まれながらの差別は酷いしみんなそれを自覚して生きている。その現実から考えるのか。そもそも自分の意見が通じない場合は相手と対等な立場ではなくとも敵対してから望んだものを勝ち取るか負けてしまうかの二択である。
そんな価値観を持ってる人間が貴族社会やら明確に決められた身分を見たところで思うのは一つである。
こいつら面倒くさい。欧州の堅苦しい雰囲気を面倒くさいと感じるのはアメリカ人ならそう不思議なものでもない。我を通すことが重要で、それ以外はすべて邪魔。
邪魔ならどうするか。
陰謀なんぞ柄でもない。ちっぽけな利権をめぐって何かをするなんてそれこそ馬鹿馬鹿しい。令嬢としておしとやかに生きろ?
自由に生きることもできない息苦しさを受け入れるなんぞたまったものじゃない。
魔法も使えるしそれもそこそこ強い。作中のジュリエッタは炎魔法を得意としていた。貴族は魔力量が多く専門的な教育を受けるという。
だが、実用的ではない。狙った状態でトリガーを引くというただ一つの動作で殺せる銃を知ってるのに、長ったらしい呪文を詠唱するとかやってられないのである。
なので彼女は銃に匹敵する殺傷力のある道具を開発した。工学的な知識はあったので、魔法金属を使って中に圧縮した空気を熱膨張させて、金属の玉を発射する。彼女は錬金術師に作ってほしいという構造を頼んで、ライフルのような仕組みにすることもできた。
炎の魔力を素のまま使うこともできなくもない。無詠唱では小さい炎を生み出す程度だが、公爵令嬢となるとその炎の熱量が尋常でないほどにまで膨れ上がる。
それで熱膨張で圧縮した空気が球を射出するようにしたら、この世界初めての銃が出来上がった。
これで何をするか。
権力で身分を強制する世界なんぞ壊れたほうがいいのだ。
この国の王は傲慢な人物だった。なんでも自分の考え通りにできないと気が済まない。ただ何かに対してどん欲になることはなく、ただ自分が考えた政策や予算案などが実現されないと怒り狂うような人である。
要するに典型的かつ平凡な、現実にも実在していた前近代社会の支配階級そのものである。人身売買とか麻薬とか違法娼館とかの話はフィクションでの話である。前近代社会はその程度のことはそもそも罪に問われることすらないので、清廉な王子様がそいつらを捕まえても罰することはできない。いや、できるが、普通に上にいるものなので死ねと命ずるだけで殺せるが。そのきっかけが平民に対する罪などということは成立しない。
自分の領地で領民を虐殺しても罪に問われることはないので、悪辣な貴族という考え方自体がそもそも間違っている。貴族は存在自体が間違っている。上にいると下にいる人間に何をしても問題になることはない。
実用的で現実的思考を好むアメリカで前近代を舞台にした貴族制の存在するファンタジーを作らないのはそう言った事情も絡んでいるのだ。
現代人は前近代社会を何か、それでも人間が住んでいた社会なんでしょう、とか思ってたりするけど、貴族の権限というのは何の理由もなく、平民を自分が望んだ通に殺せる。じゃあ反乱がおこるのではないかって話だけど、今の時代ならSNSなどですぐに拡散されるが、昔にそんなことがあるわけでもないので貴族が捕まえて殺したとなると、何か理由があったんだろうと思うだけにとどまる。
生まれながら階級によってコミュニケーションが断絶されている状態なのである。そもそも使ってる言葉自体が違う場合も少なくない。
それでも実際の貴族は別に領民を殺して回るサイコパスではなかったため、普通に統治をしたのがほとんどだった。別に殺して得になることがないからしない、その程度の認識である。
しかし乙女ゲームの世界は違う。なぜか平民が貴族の目を見て話せるなどというのがまかり通っている、都合によって捻じ曲がった世界。
実際の中世ヨーロッパで平民が目を見て聞いてもないことを話したら問答無用で殺されても文句は言えない。
ジュリエッタだって歴史は知らなかったが、なぜアメリカが身分制を否定したのかは知っている。自分がたとえ上にいる側であったとして、それにロマンを感じることはない。
そんなのは邪魔でしかない。
王様は婚約者選定も隣国の姫を迎えるより今は内部の結束力を強める時期と思っていたので婚約者を内定した。
役職のように決めたのである。愛のない生活はどうでもいい。家のため、王様が国のための政略結婚だから、なんて従うなんぞ、それこそ自分に対する挑戦として受け取ってしまっている始末で。
そもそもジュリエッタは妊娠なんぞしたらこんな時代だと死ぬのではないかと思ったこともあった。
悲劇の条件が整ったが、ジュリエッタにとっては喜劇の始まりでしかない。
13歳になって間もない二人が向かい合った。王太子ヘンリはジュリエッタを一目見たときに思った。あまり面白みのない女性なんだと。貴族の女性なんて大体似たり寄ったりで、奔放だったりしていたら令嬢として教育をろくに受けてないと社交界では嘲笑の的になるだけである。
ヘンリは優しい性格の持ち主でもあったが、同時に王太子という重圧で潰されそうな毎日を過ごしていた。
それでも見た目も美しく、堂々としたふるまいをしていたため誰も彼の内面がどうなっているかは知らなかったのである。
そんなキラキラ王太子ヘンリがジュリエッタの手を取って手の甲に口づけをしようとした瞬間だった。
パン、と音がして王太子がゆらりと動いて倒れ始める。王子付きの護衛二人が何が起きたのか近づこうとした時、パン、パンと再び音がした。
ジュリエッタは思っていた。革命なんぞが起きたら大変な騒ぎになるはずだし、ビジネスができるような社会を作るためには王侯貴族を抹殺したほうがいい。
だけど自分にはそんな大それたことができる力はまだ持っていない。じゃあどうするか。なり上がる状況を作ってしまえばいい。どんな状況だとそうなるか。国のトップとその後継者が不在となったら自動的にそうなる。
マフィアだってそうだ。トップが死ねば次に後継者争いが生まれる。慣れているのでよくわかっている。その状況を平定させるより混乱を加速させ、最終的に貴族と王族を根絶やしにする。
そんな計画を立てたとき、丁度いい知らせが舞い込んできた。
王太子の婚約者として内定されたらしく、王宮で二人で対面することになるんだと。
じゃあ先に王太子を殺せる。ジュリエッタは記憶を取り戻して一年間、ひ弱な令嬢な体のままでいられるなんてたまったものじゃないとタンパク質をたくさん取りながら鍛え始めた。
彼女はもう腹筋も割れて、腕と足も成人男性とほぼ同等にまで鍛えた。別にボディービルダーになったわけではない。平均的な成人男性と同じ程度が丁度いい。それで一番のスピードを引き出せる。体が大きくなりすぎてしまうと筋肉の重さの分だけスピードは減るのである。
屋敷で鍛錬を始めたジュリエッタを現当主である公爵は訝しんだが、彼は家のことはあまり気にしないようにしていたため止められることもなかった。
母はジュリエッタが生まれて間もないころに死んでいない。
ジュリエッタはパルクールの練習をした。自分が若かったらやりたいと思ったものだったので意欲もわいた。
軍人だってパルクールに似たようなことはする。障害物を超えるのは基本中の基本。そういった訓練をするのをジュリエッタは知っていた。
ブートキャンプさながら鍛えぬいたジュリエッタは前世の殺し屋としての雰囲気をまとい始めていた。
銃の代わりになるもの、銃と見た目はあまり変わらないが、それも作れた。この国の人間は銃の存在も知らないし、念のためこれの制作にかかわった錬金術師は屋敷の中でかくまっている。
研究員を食客にするのは割と普通にある文化だったのである。学問や音楽などの芸術に秀でた人を招いてスポンサーとなり、彼らの成果が世に広まったら貴族の名があがって影響力を増やせるので。
そして錬金術で作り上げた魔法の銃を二丁手に入れたジュリエッタ。銃身は30センチと長いのは爆発した空気が外に出るまでの時間を延ばせることで爆音を減らせると同時に威力と射程が長くなるためである。
魔法金属なので見た目にしてはかなり軽い。マグナムを考えると驚くほどである。
決行の日が近づいてきた。ジュリエッタは前世でもそうだったので、別に感情が動くこともなく淡々と王太子の額に穴をあけて、次に速射で護衛の二人にヘッドショットを決めた。ガンマンとしての経験は魂レベルでこびりついていた。
他愛ない。
そしてここは王宮。王太子の死亡はすぐ城内を駆け回るだろう、だが悠長に待ってあげるつもりはない。部屋にカギをかけて、窓越しに外へ。二階だけど鍛えぬいた体にそれくらい大した高さではない。王様の執務室は二階だけどテラスがあるのでまるわかりだ。テラスを通って上がる。別にこの国には暗部とか、隠れている暗殺者とかはない。
普通に護衛の兵士がたくさんいるだけ。そして普通に考えて宮殿を見ながら警備をすることはない。外側から内側に入らせないための警備なのに、内側を見てどうする。
なので簡単に二階のテラスから入ることができたジュリエッタは銃口を王様に向けた。これが何のかもわからないのだろう。それに魔力が高いと魔法抵抗も高いという法則がある。普通の公爵令嬢は王様より魔力が低いし、そもそも自分に敵対的に行使された魔法を防ぐ魔道具だって持っている。だがそれはあくまで魔法を防ぐもの。魔法によって起きた物理現象までは防げない。
無詠唱で魔法銃の内部に刻まれた魔法陣を起動させる。最初はただ炎を中で作っただけだったけど、場所が特定できないので失敗するときも割とざらにあった。なので間接的に魔法陣を通して起動するよう改善したのである。
表情は変わらない。ヒットの時にハイになるとか、サイコパスでもそうはならない。
「なんだ?なぜここにいる?」
それが王様の最後の言葉となった。
執務室には彼しかいなかったのでそれで終わり。
それからはあっという間だった。権力の空白をめぐっての争いは内戦の火種となって広がった。ジュリエッタは主要な貴族たちをことごとく狙撃して殺し、戦場でも活躍した。
やがて名誉職ではない、領地を持ってる貴族の中で残ったのはジュリエッタ一人となった。父?とっくの昔に殺したのでいない。
アメリカ人がなぜ自分たちを実用的だとを言っているかというと、いろいろ言えるだろうけど…。
実のところ、別にアメリカ人は言うほど実用的でもない。
燃費の悪い車を自慢するくらいだから。
実際の実用性を何より重要視するドイツ人のほうが実用的な考えをしているといえる。
じゃあなぜアメリカ人は実用的だと自らを称しているのか。
それはどこまでも前に向かいたいからだ。前に向かうため、実用性はいい道具として使える。
だから本当のプラグマティズムは実用性を前面に押して、ただ突き進むだけのもの。
邪魔をするならそれが何であっても壊す。
そういう歴史を辿っていたし、それが当たり前としてみんなが思っている。
ジュリエッタもケインだったころを忘れちゃいない。
殺しは手段でしかない。権力が欲しいわけでもない。加速する精神はどこへ向かうこともなく、ただ前に進むだけ。止めたければ殺せと。
だが誰も、こんなキラキラした世界で彼女を殺せることなんてできなかったのである。
ちなみにヒロインに転生した少女は、実はあのタイムカプセルを埋めた持ち主で。
シナリオがおかしなことになっていたことに身震いした。
ここはシナリオとかゲームとか関係ない、本物の世界であると。
そう。本当の世界では、誰だって簡単に死ぬのである。
それが王様だろうが、攻略対象だろうが、関係ないのである。




