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affection  作者: 月那
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once upon a time-4-

 その日のバイトは比較的暇だった。

 大学近くのコンビニ。が、ルカのバイト先である。

 ここ数年で再開発され、区画整理やバイパス開通などでこの周辺には新しく開店した店舗がいろいろある。

 大学も、ルカの通うキャンパスに関してはその一環で新築された為、この近辺は「学園都市」と呼ばれる綺麗な街並みの一部となっているのだ。

 このコンビニもルカが大学に入学する一月前にオープンしたばかりで、若い雇われ店長と隣の町にあった老舗系列店のオーナーがルカ達大学生をメインに集めた店なので、まだまだ接客なども不慣れな点もないとは言えないのだが、新しく綺麗な店というだけあって客受けも良く、割と人気の店である。

 ただ、立地場所が大学前なのもあり、平日は夕方の来客もかなりの数であるが、土日になると学生も少なくなり、結果割と暇な状況が多い。

「いらっしゃいませー」

 ドアが開く度、とりあえずマニュアル通りに言ってはいるが、作業は淡々と入荷された商品の陳列を続ける。

 どうせレジでは店長がタバコの陳列に当たっているし、大量の客が押し寄せない限り、ルカの作業はそのまま続けていても構わない。

 新作のスナック菓子を並べながら、ぼんやりとゆかりのことを思い出す。

 七海を連れて離婚したゆかりは、もう六年程女手一つで一人娘を育てているキャリアウーマンだ。

 そして美紅の親友であり、恩人であると昔から言いきかされている。

 中学、高校と一緒に育って来たのだが、美紅が家庭の事情で道に逸れてしまった時に、誰よりもゆかりが美紅の傍にいたらしい。その事実が美紅の今現在の幸せな日々に繋がる原点であったと、美紅からは耳タコ状態で育っているルカは、ゆかりのことは半分神格化していたりもする。

 そうやって美紅に洗脳されている部分も否めないのだが、ルカにとってはそれ以上にゆかりが大切で。

 何となれば。

 ゆかりはルカの初恋の相手であり、更に言うなら今もまだ好きな人だったりするわけで。

 高校時代にはバスケ部で割と活躍していたので、そこそこ声はかけられていた方ではあるし、この年になるまで彼女がいなかったわけではない。が、それでも心の中に常にゆかりの存在があったのは事実で。

 母が自分を産んだのは十八で、現在三十六という年齢である。その同級生なのだからゆかりも当然三十六という、自分から見れば相当年上の女性なのは十分わかっている。

 が、キャリアウーマンとしてバリバリに社会に出ているせいか、所帯感が全くない彼女は三十行くか行かないかくらいにしか見えず、中学に上がる頃から雨後のタケノコの如く伸び始めた身長のせいでやたらと年上にみられるルカとは、そんなに差があるようには見えない。

 しかも。

 彼女は離婚しているのだ。

 ほんのりと恋心を抱き始めた頃は、彼女にはダンナという存在があり、“誰かのもの”であることが前提であった為、高嶺の花という位置にしかいなかった。

 しかし、とある事情で彼女が七海を連れて“広田由佳里”に戻った時から。

 少しずつ自分の中の彼女の存在が大きくなっているのは自覚している。

 とは言え、彼女にとっての自分が“息子”であることも十分わかっている。

 けれど。

 彼女が離婚騒動で心を痛めていた時、当時まだ幼かった娘達には話していない深い事情も、美紅とゆかりは自分にはきちんと話してくれた。

 それは、自分のことを同じ目線で見てくれたからだと思うから。

 美紅もそう思って、ゆかりを助けるための協力者として自分のことを認めてくれたのだと信じているから。

 その頃から、少しずつ彼女がより大切な存在になってきたのだ。

 ゆかりをこれ以上傷付けない。

 ゆかりのことを大切に守っていく。

 それは美紅と一緒に誓っている。美紅にとってのゆかりの存在がどれだけ大事なものかわかっているから、逆に自分もこの感情をゆかりには見せない。

 彼女といる時は必ず“理性”という鎧を纏う。

 無邪気な彼女に、自分の立ち位置をブレさせない為に。

 軽はずみな言動で彼女を傷付けない為に。


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