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affection  作者: 月那
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once upon a time-3-

 ゆかりとのハグルール。というものが、二人には存在する。

 小学生の頃は妹たちを学校に連れて行くこともあり、殆ど毎日のようにゆかりとも顔を合わせていたが、ルカが中学に入る頃にはさすがに部活一色となりなかなか会うこともなくなっていた。

 そんな中、成長期を迎えたルカがにょきにょきと背を伸ばしていると、ゆかりが言ったのだ。

「えーんるーちゃんに会えなくなるの、寂しいよー。どんどん大きくなってあたしのこと忘れちゃわないように、今度からあたしと会ったらハグだからね!」

 という無茶苦茶な理論で、何故かこちらの思春期を全く無視してそのルールは定着してしまい、結果今に至っているのである。

「とりあえずバイト帰りで汗臭いから、シャワー浴びてくるよ」

「戻って来てよ」

「はいはい」

 実際、中学時代はともかく、高校に入ってからのルカの部活三昧な生活では、ゆかり達母娘と会うことは本当に少なくなり、両家の暗黙のルールである「ルカ、清華、七海の誕生日会は田所家で」という場以外では殆ど会わない日々が続いていた。

 三年になり、部活こそ引退したけれど、その後は受験勉強で塾通いを始めたのもあったし。

 大学に入ってからも、朝から学校へ行き、終わったらバイトして帰るという日々。

 ほんとはサークルには入るつもりはなかったのだが、入学早々坂本が先輩たちに捕獲され、強引に入部させられると、そのままずるっとルカも巻き込まれ。

 結局バイトのシフトが入っていない日にはサークルでバスケをすることになり。

 小学校でミニバスのチームに入ってから、中学高校とひたすらバスケの日々だったので、大学ではもうバスケはいいだろうと思っていたけれど、やっぱり体を動かすのは気持ちがいいもので、こうして朝からバスケに明け暮れる日があってもそれはそれで楽しかったりする。

 ……合コンに行きたいとも思わないし。

 内心呟きながら、リビングの扉を開けた。無意識のうちに。

 つくづく無駄に真面目な性格が自分でも歯がゆい。

「……何本空けたの?」

 見事な空き缶タワーの横で、今度は焼酎へと切り替えたらしい二人の酔っ払いが、本日何度目かわからない乾杯なんぞやっている。

 もはや台所の片付けも終えた親父は寝室へと逃げたらしい。

「わっかんなーい。見て見てるーちゃん、高いでしょ?」

 けらけらと笑いながら、空き缶タワーと一緒にスマホで写真撮影。に、巻き込まれて。

「るーちゃん、ハグー」

 いつものように軽いハグ。そんな挨拶は美紅も見慣れているので完全にスルーしてくれる。

 百五十センチほどしかないゆかりが約百九十センチのルカにハグ、という様は、殆ど大木にしがみつく子ザルでしかない。

 ルカはその背中をいつものように軽くトントンとタッチして彼女を引きはがした。

「ルカ、明日は夕方のバイトだけ?」

 風呂上りのマグカップ一杯の牛乳。

 子供の頃からのルーティンであるそれを、美紅が手渡しながら訊いてきた。

「うん」

「じゃあ、昼まで寝てるよね?」

「多分ねー」

 一気に飲み干して。

 うん、風呂上りの牛乳、最高。

「ゆかりー、お風呂明日の朝入ろう」

「おっけー」

「何それ?」

「だってもうめんどくさいしー。かと言ってルカにゆかりの裸見せるわけいかないし」

「別に覗かねーし」

「あ、じゃああたし覗くー」

「何でっ」

「だって当分るーちゃんの裸見てないもん」

「当たり前でしょーが」見られてたまるか、と思う。

「ちっちゃい頃は一緒に入ってたのにー」

「ああ、変わんない変わんない。ルカの裸なんて小学生と一緒一緒」

「いやいや、いやいや! 変わるよ、変わってるよ」

 意地になって主張するが。

「やーん、美紅ばっかずるーい。あたしも見るー、見て確認するー」

「ゆーかーりーちゃん!」

 妙齢の女性二人の酔っ払いに絡まれるのもいい加減怖くなり、

「もう! あんまし飲み過ぎんなよ! じゃあ俺、寝るから!」

 ルカはそう言い捨てて、マグカップをシンクに置いてリビングから逃げるように部屋へと逃げた。


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