近付きたい-1-
「最近緩んでないか?」
次の講義がある教室へと向かおうとしたルカの背後から、坂本が話しかけてきた。
「……っくりした。何だよ、急に」
「授業中。携帯眺めてニヤついてんの、よく見かけますが」
ギクリ。
「先日の代返の理由とその緩んだ顔には何らかの繋がりがある、と見てますが」
くっそ、いらんこと覚えてやがる。
「しかも三コマ目も軽く遅刻だったよなー?」
もう一週間は経っているはずなのに。
で、ふと気付く。
ああ、俺から話すのを待ってくれてたのか。
少しありがたくて、でも結局待ちきれずにこうやって聞き出してくる辺り、坂本が坂本らしくて。
「で。彼女ができた、で正解?」
「不正解」
とりあえず即答。だって、それは事実だから。
「あれ? 前から言ってた好きな人とうまくいったってことじゃねーの?」
「まだ彼女じゃねーし」
「あー、うまくいきつつある。ってわけね。何だよちくしょー、一番楽しい時期じゃん」
言われて、頬が緩む。のを自覚した。
実際あれからゆかりとのメッセージのやり取りは頻繁になったし、下らない用件でも軽くくれるメッセージがまるで“カノジョ”のようで。
「くっそー。やっぱりイケメンはいいねー」
「だからイケメンじゃねーって」
「はいはい。で?」
「で、って?」
「ノロけたい? たくない?」
そりゃー……。
「たい。かな」
「じゃ、今日メシ行こうぜ」
なんか、ちょっと嬉しいかも。あ、でも。
「ごめん、今日バイト」
「終わってからでいーよ。十時までだっけ? 俺も今日サークル顔出すから、十時過ぎに店の前な」
そう言って、坂本は次の講義が別だからと去って行った。




