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affection  作者: 月那
13/51

situation-3-

 ルカは基本的に真面目人間である。

 授業も朝からちゃんと受けるし、出された課題もきっちりこなしているし。

 自分で行きたいと望んで進んだ大学生活で、学びたいからここにいるのである。

 が。しかし。

 たとえどんなに真面目な人間でも、そこは十代の遊びたい盛りのオトコノコである。

 昨夜、課題が終わって気まぐれにオンラインゲームなんぞ開いてみたら、偶然坂本もログインしていたせいでやたらと盛り上がってしまい、結果夜中三時頃の記憶を最後に寝落ちしてしまうという、稀にみるやらかしをしてしまったせいで、今現在睡魔と格闘中。

 朝一番一コマ目、大部屋、一般教養の英語、しかも睡眠不足。

 この、どうしようもない状況の中、坂本なんて既に隣で爆睡中である。

 どんなに真面目人間なルカでも、この状況であくびの一つも出ないなんてあり得ないわけで。

 まじくそきつい。

 内心独り言ちて机に突っ伏しそうになった瞬間、マナーモードにしていた携帯が光り、メッセージが表示された。

 “この間はありがとう、助かったよ”

というそれの発信者はゆかりで。

 一気に覚醒する。

 “それはいいけど、どしたの、こんな時間に?”

 平日の十時前なんて、会社員がメッセージ入れられるような時間じゃないと思い、ルカが返した。

 “あ。ごめん、るーちゃん授業中?”

 “うん。けどそれは大丈夫。

 てゆーか、ゆかりちゃん今日お休み?”

 “今日ねー、七海の授業参観あるから休んだの。最初は昼からしか休めないと思ってたんだけど、ちょうど一段落したトコだったから、えいって一日有給取っちゃった”

 ゆかりのメッセージを読んで、あーそういえば美紅も清華の参観日があると言っていたな、と思い出す。

 “まさか休めると思ってなかったから美紅も午前中はパート出てるみたいだし、久しぶりにまったりしてるよー。あ、けどるーちゃん暇じゃないよね”

 ごめんなさい、なスタンプが来る。

 “大部屋だからラインは余裕”

 “えー。いっけないんだー。美紅にバレたら怒られるよー”

 文面が、文章と違ってのほほんとしてる様子。ゆかりがクスクスと笑いながら喋ってる感じが伝わってくる。

 “ゆかりちゃんが言わなかったらバレないし”

 “悪いコねー。あ、でもあたしが授業の邪魔しちゃいけないね”

 “いや。眠くてしょーがないから、ゆかりちゃんが寝ないように見張ってて”

 “見張るって?”

 “このまま喋っててよ。専門的な授業は楽しいけど、一般教養は眠い”

 眠ってるスタンプ入れて。

 “わかるー。あたしも大部屋はよく寝てたー”

 ゆかりも、某国立大学の出身なので、この気持ちはわかって貰える。

 “参観日。何時から?”

 “五時間目だから、二時くらいに行くよー。美紅ともそういう話になってる”

 “さやとななちゃん、同じクラスだっけ?”

 “そだよー。二年になってもクラス離れなかったから七海がすっごい喜んでた”

 ルカの妹、清華とゆかりの一人娘七海は同じ中学二年生。ゆかりは「狙った」ってよく話していたが、娘同士が同級生になったことを、美紅もとても喜んでいたのをルカも覚えている。

 ルカが六年生の時は、一年生二人を連れて学校に行っていたし。

 ルカにとっても双子のような妹たちである。

 “そー言えば。るーちゃんに何かお礼しようと思ってたんだけど”

 お礼?

 何のことかわからず、ハテナなスタンプを送る。

 “若い男の子が何欲しいのか。なんてあたしにはわかんなくて。るーちゃん、何欲しい?”

 “いや、お礼って。何のこと?”

 “お洋服とか、かなー?”

 ゆかりがルカの問いをスルーしたので、ルカが再びハテナのスタンプ。

 “デート、してくれたでしょ。そのお礼だよ”

 そう、ゆかりはそういう人なのだ。

 いつも誕生日プレゼントなんて貰っていて、貰うばかりだと悪いからと欲しいものを聞いた時、だったらデートしてよと言われ、ここ数年ゆかりの誕生日には二人で出かける。しかもゆかりのおごりで、というわけのわからないプレゼントになっていて。

 結局ゆかりはルカを頼ることをしてくれないのだ。

 今回のことも、そんなのお礼なんてしてもらうことじゃなくて、自分がしたくてしたことで。

 だから何もいらないから! と、突っ込みかけて。一つ。思いつく。

 “だったらさ、今日これからデートしよ?”

 そうだ。だったら逆に、甘えてやろう。

 咄嗟にそう思って、ルカがメッセージを入れると。

 “えー!?”

 驚いているスタンプが返って来る。

 “次、二限目は友達に代返頼めるからさ、この授業終わったら迎えに行くよ”

 “ダメだよ!”

 “いーの、いーの。でさ、ゆかりちゃん車貸してよ。俺が運転するからどっか行こ。そんで、ランチおごってよ。お昼一緒に食べたらななちゃんの学校まで送るから”

 ちょっと緊張しながらも、努めて軽く。ルカはメッセージを送った。

 せっかくだから、ゆかりに甘えてみようと。

 そしてメッセージはすぐに既読になる。

 でも、返事がない。

 自分でも、焦っていた。今まで、ルカからこんな風に強引に誘ったことはなくて。

 いつもいつも、誘ってくれるのはゆかりの方だから。

 でもこれくらい、いいよな? 重く、取らないで欲しい。

 “いーのかなー。美紅にバレたらあたしが怒られちゃうよー”

 あ、良かった。予想通りの方向に悩んでくれていた返事で。

 “ゆかりちゃんが言わなきゃ、バレない!”

 嬉しくなって、いつものように軽いメッセージを送って。

 ゆかりからの“OK”スタンプに、ルカは小さくガッツポーズをした。

 “学校出るときに連絡するから。おごって貰うからゆかりちゃんのオススメのお店、考えといて”


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