表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/10

2つの果実

エルフが住う土地。


次に、ワタルとティアが訪れる街。


それは、想像を絶するものだった。


それは、紛れもなく、間違いなく


悪い意味でーーー


美しく立ち並ぶ景観、まるで幻想的な街並みが、ワタルとティアを迎え入れる。


美しさの裏に潜む影にーー


闇にーー


光が濃くなればなる程、その闇の暗さが深まる様に、エルフの美しさの裏には酷く、そして悲しい闇が潜んでいた。




「すげーな!ファンタジーかよ!」


俺は、その街並みに、目を奪われた。

興奮と期待が一気に押し寄せ、テンションはマックスまで上昇している。


「凄いですね、幻想的で綺麗」


ティアも同意して、美しさに目を奪われている。


「街並みも、さることながら、美人が多いなやっぱり」


「そうですね」


ツンとトゲのある様な、冷たい返事が返ってくるが、気にしない。

女と言うものは、他の女に対して厳しいからな。

そのエルフの美しさに嫉妬しているんだろう。


しかし、嫉妬するのも無理はない。

そのバランスの取れたスタイルは、見る物を魅了する程だ。

透き通るほどの白い肌に、細く、すらりと伸びる手足、そして、小さなお尻、さらにーー胸は無ないのか


ん?


周りを見る、血眼にして俺は見る


そして気付く、いや気付いてしまった。


エルフは胸が無い事にーー


まな板だった。


天は二物を与えずとは、このことかと認識する。


確かに、胸は無いが、それ以外は抜きん出ている。


それこそ、これで胸でもあるようならば、それは罪であるだろうと俺は思う。


完璧などあってはならないんだと、欠点があるからこそ周りが引き立ち、より長所を輝かせるんだと、言わんばかりの美貌なんだ。


しかし、さっきから隣からの視線が偉く突き刺さる様だが、チラリと見ると、鬼の様な形相のティアがこちらを見ていた。


「いつまで、見ているんですか?ワタルさん?」


その笑顔は、笑っていなかった。

ヒュンと心臓を握られる思いだった。


「いや、ははは、気のせい気のせい、さっ!行こうか!」


触らぬ天使にたたりなし!

話を流し、先に進む事にした。


「まずは、宿を探すか」


「そうですね、荷物も置きたいですし。それがそうしましょう」


街を散策しなが、宿を探していると1人の少女が声を掛けてきた。


「冒険者の人ですか?」


「あぁ、そうだが、どうした?」


「宿屋はもう決まってますか?決まってないのでしたらウチに来ませんか?」


それは、願ったり叶ったりの言葉だった。


「おお!探してたんだ!助かるなティア!」


「そ、そうですね」


何故が、ぎこちない返事をするティア。

まだ何か怒っているのだろうか?


「ついてきて下さい」と少女に連れられて宿へと向かう。


その道中、他のエルフからの視線を集めていたーー

ティアが天使の様に美しいと思うのだろう。

エルフから見ても羨望の対象なのだと、俺まで胸が高くなる気持ちだった。


流石、ティアだな。


「それにしても、君は他のエルフより黒いんだな、ダークエルフって奴か?」


いつか、読んだ小説にもそんな名前が載っていた事を思い出したから聞いてみると、少女は驚いた様に反応している 


当たりだったのか、と


「ご、ごめんなさい。ごめんなさい!」


何度も頭を下げながら、少女は謝罪をしてくる。


「何がだ?気にしてないけど」


なんとの事か、わからない俺は何気なく答えた。


「「え?」」


ティアと少女がーー


「「え!?」」


2度反応してきた。


いや、1回でいいだろ、とツッコミそうになる


「どう言う事だ?」と言う俺に対してティアが少し考えて、耳打ちしてくる。


「ここで、話すのは...えっと..と、とにかく宿に先に行きましょう」


慌てた様な、何かを隠している様に答えてきた。

少女も、なんだかチラチラと俺を見ながら様子を伺っている様だった。


宿に着くと、その見た目は美しい物ではなかったが、何か趣きを感じてしまうような外観だった。

ビルが建ち並ぶ街に、唯一ある日本家屋の様な、他とは違う印象を受けた。


中に入ると、それは天国だった。


少女は、すっと奥に消えていき、大人のダークエルフが挨拶をした。


「ようこそ、わざわざ来ていただいてありがとうございます」


と、並んだ数名のダークエルフ一同が頭を下げながら俺とティアを迎えてくれた。


俺は、まるで旅館に来たのかと思うほど、その姿勢や仕草に目を奪われてしまう。


それにしても、驚きだった。


驚天動地とはこの事か!と思うほどだった。


頭を上げたダークエルフには、他のエルフには無かったものが、そこにはあった。


天は二物を与えていたのだった。


そう、2つの物を、2つの果実をーー


そのはち切れんばかりの果実は、着ている衣服をも破り切るかの如く存在していた。

微動する度に、跳ね、揺れるそれは

まるで、皿に乗せられたプリンの様に、ぷるぷるとしている。

仮に、もしそれを指でつついてしまえば、爆発を起こし俺をどこか違う世界まで吹き飛ばす程に、はたまたその指が、いや、その突いた指を始まりに、俺の体を飲み込む可能性まであるんではないかと思える程の見た目は、俺を惑わせる。

科学では証明できないであろう

柔らかさと破裂の均衡がそこには生まれているだろうと考察する。

答えは、わからない。

触れてしまえば、その結末に俺は耐え切れないかもしれない。

どちらが正解でどちらが不正解などと言う、選択をしなければいけなくなる。

そんな事、俺はしない。

夢が叶うとする物ならば、これは理想でいい。

そうあって欲しいと願う物でいい。

例えるならば、砂漠にあるオアシスの様に、近づけば近づく程、遠くなるように

その手を、どれだけ伸ばしても触れる事の出来ない物であって欲しい。

だから、俺はそれに名をつけよう。

その二つの果実を『ニュートピア』と。


数秒にも満たない時間で俺は、真理という物に、また一歩近づいたのかもしれない。


吹き出そうになる、鼻息を抑えて

深呼吸をする。

隣にいるマイエンジェルにもバレない様にしたのだ。

毅然と振る舞おう。


「何秒見てるんですか?」


「え?み、見てない.....よ?」


「話しかけても、答えませんでしたよ?興奮した馬の様な鼻息で意識ないなんて、どういうことですか?」


数秒ではなかったみたいだ。

それに、俺は何も隠せていなかった。

修羅と化したティアは、とても優しい表情で続けた。


「そんなに、大きな胸がいいんですか?ワタルさん?どうなんですか?」


くっ、どうする俺ーー。


ここで、しくじればティアは居なくなるかもしれない。

それは、なんとしても避けなければならない。

それにしても、くそ

思考の途中だと言うのに、チラチラとニュートピアが俺を呼んでいる。

いや、今は集中しろ。

考えろーーぷるん

冷静になれ俺!ーーぷるんぷるん

お前は、紳士だ。

邪な心で、女の子を悲しませるんじゃない!!ーーーぷるん

くっっそっ!無理だ!

俺は既にニュートピアの住人になっている。

くっ!!

こうなったら焼けくそだ。


「いや、俺はティアのが1番いいと思っている」


「ーーーなっ!?!?」


茹で蛸のように、赤くなるティアは俯いて、たじろいでいる。


勝ったな。


連戦連勝だな。


「あ、あのー」とダークエルフは見かねたのか、話しかけてくる。


そもそも、入り口で何をしているんだ。


「あ、すまない」


「こちらの宿で宿泊でよろしかったですね?」


「そうだが?何かあるのか?」


「い、いえ、そう言うわけではございません!何泊されますか?」


「そうだな、とりあえず10泊にしとこう」


10泊は珍しいのか、他のダークエルフも驚きの表情をしている。


「し、承知しました。今回、お世話させて頂きます。私がシルビアと申します。よろしくお願いします。」


「おう、よろしくな!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ