ティアって強い??
「え?、森は危険?そんな事ないですよ?今歩いてる、道では魔物に襲われる事はありませんよ?」
「えっ!?」
ティアの言葉に、目玉が飛び出そうになったが、押し戻す。
「ほら、ちゃんと道になってるでしょう?ここは、精霊街道と言って、世界のあらゆる場所に、魔物が寄り付かないように精霊達によって保護されているんです」
と、言う事は1人で行っていても襲われる事は無かったのか。
まぁ、しかし知らなかった事が、ティアを連れてきてくれたと考えると、ラッキーだな。
うんうん。
棚から天使って奴だな。
「それなら、ここは安心して進めるな」
「いえ、そう言う訳でもないですよ。魔物くらいの侵入を防ぐと言うレベルなので、魔族と言った種族は簡単に侵入してきます」
「そ、そうなのか...油断はできないが、そもそも魔族とか居るんだな....」
「え?当たり前じゃないですか!何言ってるんですか?魔族も、他にドワーフやエルフも沢山の種族がこの世界にいるじゃないですか」
あっーーー
そうだった。ティアには、俺が異世界から来た事を話してないのか、いや気付くと思ったけどな。こんな服装だし、案外鈍いのか?
俺は、敢えてとぼけた振りをする
「あ、あぁ、そうだったな!うっかり忘れてた!」
「そうですか?しっかりしてくださいね!」
いつか、打ち明けないといけないが、まだ良いだろう。いつかそのタイミングが来るだろうし、今打ち明けて「え!?騙してたんですか!?村に帰ります!」とか言われたらたまったもんじゃないしな。
うん。辞めとこう。
それにしても、そんな訳の分からない男にどうしてーー
「ティアは、どうして一緒に行こうと思ったんだ?こんなよくわからない男と」
うーん。と少し考えるティア、首を少し傾げて、その顎に手を乗せる姿も可愛い。
「そうですね、私には両親は居ませんし、それに、あの時、凄く寂しそうでした。私も村の人は居ましたが、1人で過ごしていたので、その気持ちは、とても伝わってきました」
両親いなかったのか...知らなかったな。
しかし、そこに首を突っ込むのは不粋だろう。
「でも、何よりワタルさんの、志に私も協力したいと思いました。一緒に居たいと思いました。それでは...ダメでしょう...か?」
「ぐぉっふっ」
無意識の、殺戮天使のハートブレイクフェイスが、俺を殺す。
これは、もう殺戮兵器じゃないんだろ?と思わずにはいられない程の破壊力だ。
見るものを全て萌殺す、まるで見たものを全て石にする、メデューサに近いのかもしれない。
いや、メデューサだ。
俺の1匹の大蛇が石のように固く....
ーーーなってないがな。
「大丈夫ですか!?」
「あ、あぁ、大丈夫だ」
俺は、気を取り直して続ける、冷静に。
「だが、本当に助かった。ありがとう。
これからもよろしくな」
「はいっ!」
ティアの笑顔とは裏腹に俺は、不安だった。
理性という化け物が俺の中で暴れるのを抑える事がでなきるのか、と。
ティアが、居る限り、日々戦い続けなければいけない事を。
もし、それが吹き飛んだ時に、俺は正気でいられるのか、と不安が募る。
そんな事を思いながらも、旅は続く。
続いていく。
そして、気付くーーと言うか知った。
「これ、今日のご飯にしましょう!」
1匹の魔物を退治したティアは嬉しそうな顔でそう言った。
それは、余りにも衝撃的で美しく思った。
食料調達で、街道から森に少し進んだところで遭遇した豚の様な魔物をティアは腰に携えてある剣で、あっさりと退治してみせた。
あっさりと言うか、一撃でーー
剣に魔力を込めた瞬間、稲妻を帯びたその剣から放たれた一撃は、紫電一閃。
音を置き去りにした斬撃は、魔物を一刀両断して見せた。
え?
強くない?
強過ぎない?
いや、これが普通なのか?
「やっぱり、狩りは気持ちいいですね」と言うティアに俺は、目が点になっていた。
「ティアは、あれか、狩りも得意なんだな?」
「そうですね!魔物を倒すのは嫌いじゃないです!」
「そうか、うんうん、それは助かるな」
動揺しながらも、俺は平然を装って答える。
危ない女だぞ、いや助かりはするが、俺の性欲の爆発をぶつけよう物なら、あの斬撃でやられていたじゃないかーー。
危ないところだったーー
いや、幸運と思っておこう。この強さが先に知れた事を、俺の性欲が爆発する前出会ったことに、感謝。
そう、感謝ーー
ゴクリと口の中にたまった物を、飲み込み
教訓にする。
据え膳食わぬは男の恥ではないと。
それから、俺は自分の教訓を守るべく、毅然と振る舞うのだった。