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「トピ」
急に上から声がした。
何だ? 起きたと思っていたけれど、眠っていたのか。
トピは無意識に手を上げた。その手を誰かが握り締める。
「トピ」
ズカシの声だ。
目を開けると、ズカシが心配そうな顔をしてトピの顔を覗いていた。
そうだ、ぼくは戦闘機の攻撃を受けて、はじき飛ばされた。それから・・・。どうなったか思い出せなかった。
ズカシの顔がすぐ近くにあった。こんなに近くでズカシの顔を見たのは初めてだ。結構イケメンなんだな。トピは思った。
「どこか痛いところはないか」
手を放して、ズカシが言った。
「大丈夫だと思います」
「そうか」
ズカシはほっとしたように、ため息をついて言った。
宇宙服は脱がされていて、キャビンのベットに寝かされていた。
部屋は人口陽灯で温められ、気持ちのいい温度だった。
「敵は?」
トピは体を起こして言った。
「すぐに逃げていったよ。撃ったのはあの一発だけだ。向こうも攻撃されたくないからな。
でも、お前、運がよかった」
ズカシは笑って白い歯を見せた。優しい顔だった。
「まだ、寝てろ。お前が気がついたことを、レブンたちに知らせてくる」
ズカシは立ち上がって去っていった。
静かになった部屋に、モーターの音が聞こえてきた。
さっきのハチのことを思い出す。
へんな夢だったな。トピはクスリとわらった。
ぼくはハチになって空を飛んでいた。ハチを怖がっていた女の人は、若い時の母だった。懐かし友達やズカシもいたな。
どうして、あんな夢を見たのだろう。
窓から星々が光って見える。
この船はN星に向かって飛んでいる。
正面の窓からN星が大きく見えた。
これから先のことはわからない。でも、あの星に行けば、新しい何かがある。
トピはじっとN星を見続けた。
読んでいただいてありがとうございました。