三人に食べさせる肉と全く触ってこない集団痴漢。
私達はガスの充填した薄暗い洞窟を進む。
ガスが充填してるので火を使うは危ないが、ギルドのみんなが朝渡してくれたアイテムを使うと明るくなった。
途中コウモリやネズミ型のモンスターに襲われたが、三人が戦って助けてくれた。
さっきは嬉しいかったが、イケメンに囲まれて触れられているのは恥ずかしかった。
「あの…、もう大丈夫だから離していいよ?」
「何言ってんだ?
離すわけないだろ!」
ばーさんが強い口調でそう言う。
ドキッ!
ばーさんの言葉に私の心臓は狂ったオモチャの様に暴れだす。
「いや、でも闘い辛くない?」
「そりゃ闘う時は離す。」
「そっか…。」
ルー君もカネさんも同じで離してくれない。
私はこんな状況なのに舞い上がって顔が赤くなっているのを感じた。
顔が赤くなっているのを見てばーさんが声をかけてくれる。
「やっぱキツイか?」
「ううん、そんな事ない。」
「厳しそうなら引き返そう。」
ルー君も優しい。
「そうですね、もう少しで遭難者がいると予想されている場所なので一旦引き返しましょう。」
かねさんももう少し行くと言いながらも引き返す事が決定している様に言ってくれた。
私は行ける!
この三人と一緒ならどこまでも行けるわ。
私がそう誓っているとカネさんが言った通り前にガスでふらつきながらモンスターと戦っている三人がいた。
三人は大きく息を吸い込みモンスターに向かって走りだす。
私も怪我人の元へ走り、貰ってきた薬草や毒消しで治療をはじめた。
「あっありがとう。」
そう言いながら治療している私の手を強く握ってくる姿に私は看護師か女医にでもなった気分でちょっと感激してしまった。
戦闘中の三人も私の事を気にして度々戻ってきてくれ、怪我人の治療をする私の肩や頭に手を当ててくれ、深呼吸をして戦闘に戻っていく。
むむっ?
何かおかしい。
戦闘が無事終わり怪我人もなんとか歩ける様になったので、みんな立ち上がる。
そして全員がどこかしら私の身体に触れていた。
「ねえ?メガネ。
セージの能力ってもしかして…。」
「セージに触れている者の毒無効ですが何か?」
「さあ行くわよ。」
私はそれ以上の会話をやめ洞窟の奥へ歩きだす。
「そっちは洞窟の奥ですが…。」
「うるさいわね!
こんなとこ今日中にクリアーしてやるわよ。」
私達は洞窟の最奥まで進み計32人全員を助けだし、ついでにガスが出ている穴もアイテムと石で塞いだ。
そして行きよりも帰りの方が悲惨だった。
計35人の男達が満員電車の様に私を取り囲んで私に触れて歩いている。
髭面やハゲのマッチョオヤジや、オラオラ系男子や高校生くらいのスポーツマンなど男性ホルモンの塊の様な奴等が私を取り囲んでいる。
そしてここは盗賊や強姦が当たり前の異世界。
それなのに誰も私のエロい所を触ってこないのだ。
そんなに私は魅力がないのだろうか?
あー屈辱だぁー、イライラするー!
行きに倒したせいか、私の発する聖なる魔力か、私の発するブスオーラかはわからないがモンスターも一切出てくる事もなく、無駄に歩き辛いだけの満員電車歩行は40分以上も続いた。
ふざけんな埼京線なら大宮着いちゃってるよ。
お前らの筋肉は飾りかボケ!
少しは男らしくケツでも触りやがれ!
私の心の叫びが頂点に達した頃洞窟の出口に到着した。
洞窟外では遭難者の仲間や家族が心配そうに待っていた。
「おうー無事だったのかお前。」
「心配かけやがってこの野郎!」
「生きて良かった。」
「お父ちゃんお父ちゃんだ!」
………。
みんな口々に喜びの声をあげる。
それを見て荒んでいた私の心のは少し癒された。
「セージ様バンザーイ!
セージ様バンザーイ!
セージ様バンザーイ!
………。」
拍手と大歓声の中私達はギルドの用意してくれた馬車に乗る。
馬車を降りた私はいつもの店に入って昨日奢ってくれた店の店主に声をかける。
「オヤジ!
こいつら三人に好きなだけ肉食わしてやってくれ。」
「マジかアメリア様サイコー。」
「やったーお肉だー。」
「今日は僕も食べますよー。」
私は三人の食べっぷりを見ながら今日の成果を確認する。
ふむふむ。
ばーさんは五人前で野菜は一切食べていない。
予想通りだな。
ルー君は三人前で以外ときれいにバランス良く食べてる。
おー、ギャップ萌えきたな。
カネさんは四人前で野菜も食べてるが意外な事に口にご飯が付いてる。
なんだと!
お前もギャップ萌えなのか?
三人で12人分か。
私も入れると13人分になるから、家計を見直さなきゃいけないな。
私は久しぶりの牛肉らしき物を食べながら明日からの食事を考えていた。
私は彼等の主人なのだ。
主人はしっかりとみんなを食べさせないといけないのだ。
それにしても運動したせいかお肉が美味しいな。
ええいっ家計の心配は明日から。
今日は私もお肉いっぱい食べちゃおう。
「オヤジ肉の追加とお酒一杯ちょうだい。」
こうして私達の宴会は続いた。
翌日の昼過ぎに起きて私は二日酔いの頭痛で頭を抱える。
「大丈夫かお前?」
「おーい水飲むか?」
「セージ様なのに酒乱たのですね。」
私は寝ぼけた頭で聞く。
「あなた達は平気なの?」
「だって俺達アメリアに酒飲む許可貰ってねえぞ。」
そう、あの後私はどうやら一人で飲んでぶっ倒れたらしい。
最悪だ。
二日酔いと二重の意味で頭が痛かった。