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関節キスと緊急クエストギガアナの大穴300万ドン。

私達はいつも通り薬草を採取していた。


「ルー君、カネさん、バーさん。

ギルドにもどるわよー。」


私は何とか名前を工夫してそれっぽく呼んでいたが、バカだけは無理だった。


逆から読んでもカバだし、カーさんかバーさんしかないのだ。


今は仕方なくバーさんと呼んでいる。


一生懸命仕事をしてご飯を食べる。


イケメン奴隷達と薬草を拾うだけなので、仕事仲間に悪口を言われたりもしない。


私は最高の気分だった。


「ねーねー、アメリア。

たまにはでっかいお肉食べたいよー。」


ルー君が私にそう言う。


「そうだサルの言う通りだ。

わざわざ俺達3人を奴隷にして、

なんで毎日毎日草むしりして、

草とパンばかり食べてんだ。」


ばーさんもルー君に同意した。


「草むしりじゃないよ。

それに草じゃなくてサラダだよ。」


私はそう返事をした。


「世の中には与えられた役目があるのですよ。

せっかく神に愛され力に恵まれたセージに生まれたのに、その力を人々の為に使わないのは間違いです。」


カネさんに「神に愛され」とか言われて、今まで神はおろか男にも対して愛されていなかった私は気合いが入った。


「そっか三人とも男の子だもんね。

お肉食べたいよね。」


私がみんなにお肉を食べさせるんだ。

頑張るぞ!


私達はギルドで薬草を納品して新しいクエストを探す。


オーク討伐。

オークって豚よね?

食べれるのかしら?


などと考えているとギルドに大慌てで一人の剣士が駆け込んできた。


「大変だ!

ギガアナの大穴でガス爆発だ。」


ギガアナの大穴。

それほど強いモンスターは出ないが生活に使える魔石が取れるのでお金になると新人には薬草取りよりも人気の場所だ。


ギルド職員が大慌てで状況を確認して緊急クエストを貼り出す。


緊急クエスト!

ギガアナの大穴に残された者達の救出。

報酬300万ドン


えっ!

300万ドン?


「おっおいアメリアこれ受けようぜ。

お前セージなんだから人助けしなきゃダメだろ。」


ばーさんが興奮して言う。


「ガス爆発だよ!

それに300万ドンって大金でしょ?

危ないに決まってるじゃない。」


「大丈夫ですよ、ギガアナの大穴なら僕達三人で何回も行った事あるし、ガスに毒が含まれていてもセージには効きません。」


カネさんはそう説明してくれた。


「ねえアメリア、肉だよ肉。」

ルー君もやる気になっている。


私は達がそんな会話していると周りの人達がざわめき出した。


「えっ、セージ様だって?」

「マジか?」

………。


こうしている間にも噂は広まっていく。


そしてとうとう人ごみの中の一人が言い出した。


「セージ様、おねえげえだ。

どうか俺の仲間を救ってください。」


セージ様息子を…、セージ様仲間を…、セージ様あいつは俺は親友なんだ…、セージ様どうか弟子を…。


気付いたら私は囲まれていた。


ふと一人教室に取り残されて作業する景色や、会社で自分の机だけ電気がついている光景を思い出す。


私はこの空気を知っている。


めんどくさい文化祭の準備や手間の掛かるトラブル残業を頼む時の目だ。


こうして熱心に頼んでおきながら、自分達はデートに出かけ、作業が終わった翌日には頼んだ事などころっと忘れているのだ。


「べつにいいじゃねえか。

俺達も居るし、ガスの影響がひどけゃ引き返しても誰も文句は言わねえよ。」


ばーさんの言葉で私の嫌な記憶が消し飛ぶ。


俺達も居るし…、そうか一緒に行ってくれるんだ。


「よし!私に任せなさい。

ルー君、カネさん、ばーさん30秒で支度しな!」


「よっしゃー。」

「やったーお肉ー!」

「三人とも待って下さい、出発は明日ですよ。」


その日の夕食はいつもとは違いパンを2つに

して、鶏肉のスープもつけた。


私はお腹いっぱいだったが三人はペロリと食べてしまった。


いつも私に合わせて我慢していたのかもしれない。


三人の主人として申し訳ない気持ちになる。


「私の分も食べる?」


「えっ良いのか?」


ルー君はスープの残りを、カネさんはサラダの残りを食べる。


そして私が手に持っていた食べかけのパンをばーさんが掴んだ。


「えっそれ私の食べかけ…。」


「食べちゃだめか?」


「別にいいけど歯型ついてるよ。」


「別にいいならいいじゃねえか。」

ばーさんは美味しそうに私の食べかけのパンを食べた。


間接キス…。


私は一瞬そんな事を考えてしまった。


でもばーさんはカッコいいからキスなどし慣れているだろうな。


私なんかキスどころか小学生の頃は男子に名前に菌を付けられたあだ名で呼ばれていたのだ。


こうして嫌がらずに食べてくれるだけでもありがたい。


よーし、明日は頑張って三人にお肉食べさせちゃうぞ!


「親父!会計頼む。」


私が調子に乗ってそう言うと親父は今日は要らないと言った。


「嬢ちゃん、明日ギガアナの大穴に行ってくれるんだろ?

あそこはこの街のみんなの生活を支えている洞窟だ頼んだぜ。」


ーーー


次の日の早朝私達が準備して街の入り口に行くとギルドのみんながいた。


みんなは私達に薬草や道具を手渡してくれ、馬車も用意してくれていた。


ただ見送るだけでなく、馬車の護衛もしてくれて通り道に出た雑魚モンスターも狩ってくれた。


ギガアナの大穴の入り口にもギルドのみんながいて、赤ペンでチェックのついた洞窟の地図を渡してくれた。


私達よりも早起きしてなんとか入れる所までは崩落などを確認してきてくれたらしい。


はじめてだった。


どうせみんな私にめんどくさい仕事を押し付けて終わりだと言っていた。


私は無言で埃とガスが充満する洞窟に入った。


何か喋ると泣いちゃいそうだったのだ。


ばーさんが私の右手を握ってくれ、ルー君が私の左手を握ってくれた。

カネさんは私の肩にそっと手を添えてくれた。


そう私は一人じゃないんだ。

セージの天才アメリア様だ。


泣いてる場合じゃない必ずみんなを助けてみせる!


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