最悪な出逢い。
それはあっけない幕切れだった。
アパートの階段の途中に猫のフンが落ちていてそれを踏んで滑って死んだのだ。
「あー、もうどうでもいいやー。」
怪我が酷かったせいか打ち所が悪かったせいかはわからないが、痛みはあまりなかったが自分の血の海の中で私は生きる事を諦めた。
次生まれてくるなら美人にして欲しいな。
看護師とかになりたいかも。
美人天才女医とかもいいな。
そんな私にどこからか声が聞こえてくる。
「わがままばっか言うな。
どれか一つにしなさい。」
私は答えた。
「人助けをして喜んでもらいたい。」
あはは、私あんなに顔で苦労したのに人助けがしたいとか言っちゃったよ。
まだまだ私も捨てたもんじゃないね。
「了解した。
第二の人生頑張って生きるが良い。」
その言葉を聞いたのを最後に私は死んだ。
ーーー
目が醒めるとそこはキレイな草原の真ん中だった。
何が起きたかわからないがどうやら私はどこか遠い世界に飛ばされたらしい。
これはもしや話題の異世界転生なのでは?
私は喜んで東京では見られないキレイな水が流れる川で自分の顔を確認する。
あちゃー。
そこには東京で良く見慣れたブスが写っていた。
ああ神様、異世界転生失敗です。
私は残念な気持ちで歩き出した。
ブスはどう頑張ってもブスなのだ。
自分の足で歩くしかないのだ。
しばらく歩くと前から杖を持った背の高い知的な眼鏡の男性と背が高くて筋肉質なスポーツマンと背は小さいがなかなか顔の整った少年の三人組が歩いてきた。
三人の服装は魔法使いの様なローブとゲームの世界の様な鎧と動きやすそうな丈夫な生地の服を着ていた。
なにやら三人はこちらを見てニコニコしている様な気がする。
もしや、私はこの世界では美人な顔なのかもしれない!
私は人生初の出来事に心臓が張り裂けるほど熱くなった。
三人との距離およそ400メートル。
300、200、100、そして5メートル。
もはや三人が私を見てニコニコしているのは間違いなかった。
「なんだブスじゃねえか!」
「ええ、ブスですね。」
「だから俺がブスだって言ったじゃねえか。
シーフの目舐めんな。」
数秒前の私のトキメキを返して欲しい。
私は前の世界の小学生時代を思い出しそうになって目眩を起こしかけた。
「おいブス!
犯したりはしねえから金目の物置いてきな。」
ヤバイこの三人はヤバイよヤバイよ。
どうやらこちらの世界では女が一人で歩いていれば犯されるか身包み剥がされる世界らしい。
三人は私を取り囲み服を破いて奪い取り、ポケットを確認する。
「なんだこいつ1ドンも金持ってねえぞ。」
「顔もブスでお金も持ってないとか使えない奴ですね。」
「えー、今日は肉食えると思ったのにー。」
下着姿で倒れている私には目もくれず三人はお金の話ばかりする。
「おい!私の服破いてくれてどうしてくれるんだよ!」
そう言って私は破れかぶれに鎧の男を突き飛ばした瞬間だった!
私の手から白く光る真珠のネックレスの様な物が放たれて三人を縛りあげた。
「げっ!まさかこいつ神官なのか!」
「これはマズイです。」
「うげー、動けないよー。」
なんだかわからないが私の勝ちらしい。
私は三人服を取り上げとりあえず少年の丈夫そうな生地の服を着た。
続けて服のポケットもあさりお金らしきコインを奪った。
「おい!ちょっと待てお前神官なんじゃないのか?
お金は許してくれ。」
次に私はクレジットカードの様な物を見つけた。
これは転生直後に大金持ちの予感かもしれない。
「おい!いくらなんでもギルドカードは許してくれ。
それがないと俺達死んでしまう。」
「ギルドカードなにそれ?
私遠い国から来たからわからないから説明してくれる?」
途中何度かギルドカードを破ろうとしたり、川に捨て様としたり脅しながらこの世界の事を聞いた。
そして今私は三人の子分を従えて街に向かっていた。
もちろんギルドに登録して身分証と仕事をゲットするためだ。
ギルドは良く分からないが派遣の登録所の様なものだと理解した。
街に着き私はまず服屋に向かった。
もちろん支払いはこいつらのお金からだ。
前世ではまったく経験できなかったが、女子の服のお金は男が払うものなのだ。
私は動きやすそうなズボンとシャツとパーカーの様な物を買った。
本当はこいつらのお金だしもっと良い物を買いたかったが、前世の悲しい習慣でこれからの事を考え派遣の仕事をしやすい服を選んでしまった。
ギルドに辿り着いた私は受付の女性に話しかけた。
「こちらに登録したいのですが…。」
職業などを聞かれたがわからないと答えるとなにやら大きな水晶の様な装置に手を置く様に言われた。
水晶に私の能力が照らし出された。
何やらゲームの様な数字が並んでいたがわからないので無視してとりあえず職業を見る。
職業 セージ。
「なっなんだと!
神官じゃなくてセージなのか!」
「僕もはじめて見ましたよ。」
「おおースゲー。」
3バカだけでなく、受付の女性も何やら興奮気味だ。
「まさかセージ様とは知らずに失礼致しました。」
受付の女性がそう言って私に深々と頭を下げる。
あとで知ったがセージと言うのは神官の上のプリーストの上のクレリックの上のビショップの上のらしい。
良く分からないが私は聖なる女の子なのだ。
「ところでセージ様、あの三人とはお知り合いで?」
受付の女性に聞かれたので私は正直に草原で襲われたと答えた。
それを聞いて三バカが震えだす。
「では、死刑にしておきますね。」