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目覚め

 夢を見ていた。一人の男の人生だった。

 だんだん意識が覚醒していき、そして気づいた。

 あぁ、あれは僕か。









 とある屋敷の一室。そこで僕は目覚めた。

 一人で寝るには少々大きいベッド。そんなベッドより何倍も広い部屋。

 扉が三つと机や姿見、ソファなどの家具があるが、だいぶ質素な部屋。

 僕の部屋はあまり物のない部屋だ。


 とりあえず目が覚めたので顔を洗うことにしよう。

 僕は三つある扉の一つ、トイレと手洗い場の部屋に入った。


 入って正面に鏡と手洗い場と台が一つ、右手にトイレがある。

 トイレで用を済ませ、台に登り鏡の中の自分と目が合う。


 少し癖のある茶髪と黄色の瞳。頬にはそばかすが少々。

 将来イケメンになるかと問われても、はいと即答できない顔立ち。

 それが今の僕、クレット・ケルトニーの顔だ。


 顔を洗い、部屋に戻ってソファに腰かけて夢のことを考える。

 あれは夢というより前世の記憶だった。

 僕は不治の病で死んだ。それは確かだ。

 そして現在クレットとして生きている。


 前世の記憶を見たせいか思考が大人びた気がするけど、別に問題はなさそう。

 今の家庭環境などもちゃんと把握できてる。


 僕はケルトニー子爵家の三男として生まれ、今年で5歳。

 上には兄が二人と姉が一人、下には妹が一人いる。

 長男と姉と妹は異母兄弟であり、次男と僕は側室の子供だ。


 上の三人は寮のある学校に通っており、長期休暇にしか帰ってこれない。

 妹は一昨年生まれたばかりで、今我が家で一番可愛がられている。


 父と母二人は基本的に優しい人たちだから、喧嘩なんてそうそうない。

 そう考えると前世に比べて、今はとても幸せな生活を送れていると思う。


 頭の中で現状を整理していると、廊下に続く扉が静かにノックされた。

 ちなみにもう一つの扉は僕の衣裳部屋だ。


 「はいっていいよー」

 「失礼いたします、クレット様おはようございます」

 「おはようございます」

 「うん、二人ともおはよう」


 入ってきたのは二人、大人の女性と少女だ。

 僕の専属メイドのジェイナとその娘のジェシカ。

 ジェシカは僕と歳が近く、近々専属にするのでジェイナと共に行動し、勉強中らしい。


 「今朝はお一人で目覚められたのですね」

 「ちょっと不思議な夢をみてね、目が覚めちゃった」

 「そうでしたか。朝食の準備ができておりますが、いかがされますか?」

 「いただくよ」

 「かしこまりました。ただ、私は別件がありますので、ジェシカにお供させますがよろしいでしょうか?」

 「大丈夫だよ」

 「ありがとうございます。ではジェシカ、クレット様のお供頼みましたよ」

 「はい!」


 そうしてジェイナは僕に一礼してから部屋を去っていった。

 僕はソファを降りてジェシカと共に、食堂へと向かった。







 道中朝食は何か尋ねたりしながら食堂に着くと、そこには妹のエレナとその母親ユリアン、そして僕の母であるレスティの三人がいた。

 ユリアンはエレナにご飯を食べさせながら、レスティと会話をしていたようだが、僕に気づくと三人は笑顔で迎えてくれた。


 「おはようクレット」

 「おはようございますクレット」

 「おはようございますユリアン母様、レスティ母様。エレナもおはよう」

 「にぃ、あーよ」


 うん、エレナは今日も可愛い。一番可愛がられるのも無理はない。

 母親譲りのサラサラの金髪にくりっとした青色の綺麗な目。その可愛らしい顔はまるで童話に出てくるお姫様みたいだ。

 将来は引く手あまたの美少女になるだろう。


 そんな妹を眺めて癒されながら席に着くと朝食が運ばれてきた。

 今朝はパンにコーンスープ、サラダとスクランブルエッグにソーセージといったよくある朝食だ。

 それらを食べながら母たちの会話に耳を傾けていると、話題が僕の誕生日の話になった。


 「そういえばクレットももうすぐ5歳ね、誕生日パーティーの準備は進んでるのかしら?」

 「そうですね、ジェイナ中心で準備してると聞いてますので問題ないと思いますよ」

 「なら安心ね。でもやっぱりこの子がなんの天恵を得るのか気になるわよねー」

 「私としてはよほど悪いものでなければどんなものでも嬉しいですね。クレットが望むものですと一番いいんですけど」

 「いやいや、男の子ならやっぱり立派なものがいいでしょ、ねぇクレット?」

 「うーん、そうですねー」


 【天恵】人々が5歳の誕生日を迎えるとき、神から授けられる特殊な能力。

 種類は様々で英雄になれるほどのものがあれば、なんの役に立つかわからないと言われるものもある。

 当たりはずれはあるが、基本的には損のない能力である。

 僕ももうすぐ5歳になるので、誕生日パーティーの前に神殿に赴き、そこで天恵を授かることになる。


 「僕は平和に生きたいので、戦いとかの天恵はちょっと・・・」

 「もー、夢のない子ね。もっとこう、英雄になりたいとかそういうのはないのかしら。そういうところは母親に似たのかしらね、レスティ」

 「本人がこう言ってるので、私からは何も言えないですよユリアン様」


 興奮してるユリアン母様とそれを見て苦笑するレスティ母様。

 そんな二人を眺めつつ、僕は朝食を食べ終えたので席を立った。


 「では、僕は勉強してきますので失礼します」

 「あらそう、じゃあ後でエレンとも遊んであげてね」

 「わかりましたユリアン母様」


 三人に見送られつつ食堂を後にし、いつの間にか後ろにいたジェシカと僕の勉強部屋に向かった。


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