第九話 戦いの前に、戦友となる為に
『スリーループボールを倒した!』
『勇者のレベルが上がった!』
『戦士のレベルが上がった!』
『魔法使いのレベルが上がった!』
『僧侶のレベルが上がった!』
なんか今、何か聴こえた気がする。しかもこれまでに八回ぐらい聴いた覚えがある。なんだろう。
「よし、皆。そろそろ良いだろう」
「ってことは?」
「リベンジだ!」
「ぃゃ、そのまぇにそぅびをととのぇるんじゃ」
ちなみにお金はいくら貯まったの?
「計3000Gだね」
「正確には3240Gだな。全員の装備を整えるには十分な量だ」
ふぅん。剣と杖とロッドと……僧侶は手袋だっけ? それで鎧二人分とローブと……僧侶は?
「私も鎧で大丈夫だよ」
へぇ。そうなんだ。
「んじゃ、一回町に戻るぞ」
「おー!」
「ぉー」
おー!
「いやお待ちなさいな」
ん?
「ん、なぁに勇者」
「どうした? なんか面白いのでも見つけたのか?」
なんか呼ばれた気がしたけど。
「呼ばれた気がしたって」
「そうか? 俺には聴こえなかったが。僧侶はどうだ?」
「うぅん、私も。魔法使いは……って魔法使い! 何処行っちゃうの!?」
「おいおいおい!」
うわ、魔法使いがふらふらと円クリスタルに向かって突撃しに行ってる!
「ちょっ、だから人の話を――――」
それどころじゃないんだよ! 待って魔法使い、そっちは危険だよ!
~~海老~~海老~~
「はぁっ、はぁっ、ったく魔法使い!」
「ほぅ?」
「ボケてんじゃねぇよ! わざわざやられに行くなっての!」
「ほっほっほっ、なんのことかの?」
あ、ちゃんと喋った。珍しい。
「とぼけるなっての!」
「まぁまぁ戦士、そんなに怒らないであげてって」
「そぅじゃそぅじゃ」
魔法使い、今は少し反省しようね?
そこにスッと紅茶が差し出される。おぉ、いい臭い。それにちゃんと人数分あるし。
「……落ち着きましたか?」
「あ、うん。大丈夫だよ」
「あぁ。しっかしこれは美味しいな」
「でしょう? 私のとっておきです」
へー。
「……むむ? なにかぉかしくなぃかの?」
「え、何が?」
「せんしょ、てんこじゃ」
「え? あぁ。整列!」
ピピーッ! 皆で横並びになる。
「いち!」
「にぃ!」
「さんじゃ」
「よんです」
ごだよ。…………んん?
「ほら、魔法使い。四人じゃん。私に勇者に戦士と魔法使いで四人」
「……いや待て僧侶。勇者は喋れないぞ?」
「あ」
えっと、妖精剣士さんどうも。
「いやその、ふざけた私もあれですけど気付かないあなた方も中々のものですね」
「――い、いつのまに!?」
「あぶねぇ! 魔法使いが気付かなかったら後ろから刺されてたところだ!」
「ほっほっほっ、ゎしのぉてがらじゃのぅ」
そうなの? 怖いなぁ。
「いやその、このグループにつっこみ役は居ないのですか……?」
「ゎしじゃ」
魔法使い、残念なことにそれは無いと思うよ。
「つっこみは戦士でしょ~?」
「む…そうか……ま、まぁあれだ。レベル上がったしたまには羽目を外したいじゃないか、な?」
「え~?」
「ぇぇー?」
ええー。……なんだこの流れ。
「というか、妖精剣士はなんで着いてきた?」
「いや、だからそのですね。人の目の前で自分を倒す訓練をしていたら誰でも声をかけるでしょう」
「そうか?」
「そうなのです」
「しゃっしゃっ、せんしはほんとぅにてんねんじゃのぅ」
「うっせぇ俺のどこが天然なんだよ」
ところで天然って自然とどう違うの?
ていうかクリスタル倒しに夢中になっててここまで来てたとは思わなかったよ。
「ってことは話は聞いてたでしょ? 一旦町に戻って色々整えてからリベンジしにくるよ」
「今度こそ倒してやるから覚悟しとけよ、妖精剣士!」
「ほっほっほっ」
んー、そんなに強くなれたのかな? 正直なところ実感は一切無いや。
「はぁ~~~~」
妖精剣士が溜め息を吐く。
「ぁ~~~」
深く深く、
「ぁ~~」
深すぎない?
「そろそろ別の世界に行きたかったんですけど、それならば仕方無いですね」
「悪いな、付き合ってもらうぜ」
「ぼっこぼこにしてあげる!」
「ねむぃのぅ」
だから魔法使いは空気読んでよ。それじゃ、町に帰るよ。
「ふふ、待ってますよ。……勝つのはやはり私ですけど」
さぁて、次回で妖精剣士との決着がつきますよ。
ドッチガカツンダロウナー(棒)