第四話 家を出れば森、一歩進めば敵
今回、少し長くなります。(いやまてよ? もしかしたら次回が短いのかもしれない)
勇者たちはついに魔王を倒しました。いよいよ旅が始まります。
……ん、あれ? 魔王討伐の後に旅?
……順番は気にしちゃいけない!
魔王との戦いから数分。
幸い、倒れたのは魔法使いだけだった。
「魔法使い~。起きて~」
「ベッドに寝かせとけ。その内目を覚ますさ」
それは酷くない?
と、何か凄く軽快な音楽が流れる。
「ふぅむ、ぉきたのはゎしじゃ」
「お、起きたか魔法使い。」
「ほらね勇者。びっくりしうわ目玉が飛び出てる!?」
横から見たら半分ぐらい飛び出てるか? こんなとこだけ車海老の特徴を残してあるとか、そんなんでいいのか投稿者?
まあ、それぐらい驚いたのだろう。
だって血がぶしゃあって……なってないね。赤いのはベーススライームの体だった。
よく考えたらただの体当たりでこけてただけのような気がしてきた。
「おしっ、それじゃ町に行くか。そろそろ金が無くなってきたし、道中で魔物を倒していけば良いだろ」
「そうだね。それに、町での魔王の影響も調べておかないと」
「ゅぅしゃょ、ぉこしてくれんかの?」
勇者が魔法使いをベッドから起こしてあげる。
「町まで二、三日かかる。今のうちに準備しとけよ」
「はーい!」
「ぅむ」
勇者もしっかり頷いた。
…………何が必要かな。取り敢えず海水は欲しいな。あとプランクトン。
~~海老~~~~海老~~
「準備できたか」
「うんっ!」
「ゅぅしゃがかなしぃかぉをしてぉるぞ」
「ん、どうした勇者」
言葉が話せないから身ぶり手振りで何とか伝える。
両手で口に掻き込む仕草。それと何かをお腹に詰め込む仕草。
「んん? 良く分かんねぇな」
「………………つまり、食べ物とか水とかを用意出来なかったの?」
うんうん、そういうこと。てかよく分かったね。
「……はぁ。ほれ、そんなとこだろうと思って水筒と食いもんは俺が多めに用意してある。ナップザックと水筒。乾パンだ」
「ふぅむ、ゎしのぶんももってくれんかの?」
「じいさんは自分で持てるだろうが!」
パンかぁ。一応食べれるけど……あの曲がった針は付いてないよね? なんとか逃げれたもののあれは痛い。
水筒に入ってるのは…………水かぁ。しかもなんか臭い。
「不服そうな顔しても駄目だぞ。自分で用意出来なかったのが悪い」
「うわぁ、戦士、スパルタ~」
「そうか? こんなもんだろ」
「ふむ、ゅぅしゃにもぃろぃろぉぼぇてもらぅひっょぅがぁるしの」
「そういうことだ。次からは自分で用意しろよ」
しっかりと頷く勇者。
海って近くにあるかなぁ。
「そろそろ行くぞ」
「まずは町へ、だね!」
「ぉっとっと」
ふらつく魔法使いを支える勇者。大丈夫かなぁ。
~~海老~~~~海老~~
家を出て少し。
「む、皆! 敵だ!」
『クリスタルが現れた!』
そこに居たのは宙に浮く、人ほどもある大きな鉱石。ちなみに水色の宝石で、綺麗に加工されている。ダイヤモンドみたい。
「凄く、大きい…………売れるっ!」
「魔物が売れるかっての!」
戦士の突っ込みを無視して僧侶が駆ける。
『僧侶の攻撃!』
『クリスタルに4のダメージ!』
「っ、硬い! 痛い!」
「っぇでなぐってきくかのぅ?」
無理じゃない? そんな思考をした勇者が止めようとしたが間に合わず、
『魔法使いの攻撃!』
『クリスタルに1のダメージ!』
「ぅでが~しびれ~たのぅ~」
「じいさん、無理すんなって」
『戦士の攻撃!』
『クリスタルに2のダメージ!』
『クリスタルは倒れた!』
「ほれこの通り」
「あ~~!!!」
突如僧侶がすっとんきょうな叫びをあげる。
そして物凄い勢いで、倒れた……いや、壊れたクリスタルを手に掬う。
「こ、壊れ…………あのままなら何カラットあるか分かんなかったのに~~!」
ちなみに1カラットで0.2グラムらしいです。
「だから、それは魔物だから」
「あ」
クリスタルの残骸がすぅ……と消える。
代わりに、ゴールドが数枚ポツンと置かれていた。
「消えてゴールドになるだろって言いたかったんだが」
「あ~~!? 嘘だぁ~~っ!」
へぇ、あんな綺麗な石は初めて見たけど、消えるんだ。
勇者は所詮車海老なのでそれはそういうものだと考える。
それはまぁ仕方無いのだが、無論、クリスタルという魔物だから消えたのであって普通の宝石は斬っても消えません。あしからず。
「せんしょ、ゎしのぅでにヒールをぉねがぃじゃ」
「そんぐらい自然に治るだろぅが」
……そういえば、何もしてないなーと思いながらボーッと眺めてる勇者。
その後ろからそろ~っと忍び寄る青い影。
「っ、勇者!」
「危ない!」
『純クリスタルが不意をついてきた!』
『勇者に3のダメージ!』
『純クリスタルの攻撃!』
『勇者に3のダメージ!』
勇者は背中から硬い何かに体当たりを喰らい、倒れたところにさらに追撃を喰らった。
「ほぅ、ゅぅしゃょ、たのしそぅじゃな」
いや、尖った部分が背中に刺さってて痛いです。
「言ってる場合か!」
「うりゃあああ!」
『僧侶の強攻撃!』
『純クリスタルに5のダメージ!』
『戦士の攻撃!』
『純クリスタルに3のダメージ!』
「魔法使い! やってくれ!」
「ほぃほぃ」
『魔法使いのファイア!』
『純クリスタルに4のダメージ!』
『純クリスタルは倒れた!』
「ふぅ~~っ」
「おい、勇者。大丈夫か?」
大丈夫…とは、言えない。二つの意味で。
「たく。ヒール」
『勇者のHPが10回復した』
「よし、いいか?」
ふむ、これで二回目だけど相変わらず素晴らしいの一言に尽きる。
まるで生前(?)の海に戻ったようだ。
「うん、少し惚ほうけてるけどオゥケィだってさ」
「ぉぅけぃじゃの」
「うーん、やっぱりまだ魔法使いは真似れないなぁ」
いや、真似なくていいよ? 多分無理だし。
そしてその後は特に襲われること無く順調に進み、夜に。
「…………よし、テントは張れたぞ。そっちはどうだ?」
「じゅんちょぅじゃ。すぅぷはできたぞ」
「あ、勇者。うん、そう。その剣で枝をちゃちゃっと斬っちゃって」
はいはいスパスパーッと。それにしても火は怖いなぁ。なんか、こう、近付くと、体が赤くなって、プックリしてくる。
……車海老だから、仕方無い。
「んにしても、勇者と意思疏通出来るのが僧侶だけってのが面倒だな。喋れないんだよな?」
そうそう。うんうんと頷く勇者。
元が車海老だから、どうにも人間の体を上手く扱えない。かろうじて、こう剣を降り下ろすことだけは出来るけども。あと移動。
「勇者は顔によく出るから分かりやすいよー?」
「そぅじゃのぅ。……むむ、ここじゃっ!」
魔法使いが珍しく大声を出す。
慌てて勇者が確認すると、ホカホカのスープが出来ていた。
「さっすが魔法使い~! 家庭的!」
「そぅでもなぃぞ」
「……ま、勇者のことは町に着いてからでいいか。んじゃ、周りを気にしつつ…」
「「いただきます」」
「ぃただくぞぃ」
…………プランクトン、入ってないのかぁ。
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全部してくれたら車海老のように腰を曲げて土下座します。