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人生いろいろ
一応、なんだな、やっぱり。そういやここんとこまた会ってないな。
僕は必死に声に出さないようにしていた。
「そうだ。小雪どうしてる?」
「…亡くなったよ、もう三年になる。」
僕には返す言葉が見当たらなかった。悪気がないのを察した正紀が言葉を探して話し続けてくれた。
「一条なんて三人の子持ちだけどな、関口の爺ちゃんはこないだ百歳になったって、一真んとこはおばちゃんが再婚して新しい弟ができて、並木は旦那がロシア人だと。」
「へぇー…」
「みんなそれぞれ、いろいろだよ。」
僕は気が遠くなる想いをしない代わりに、仕事にかまけて世界が見えていなかったことに気付かされた。冴子のことも、同じくらい見えていないような気になった。