始まりはお節

正紀の彼女は

「前田？」

正紀は照れを隠すように下向き加減で大きな鶏唐を頬張った。

「いが～い。」

正紀は一瞬固まり、またすぐに咀嚼を続け、鶏を食道へ送り込むと荒々しくビールをコップに注ぎ足して飲んだ。

前田は目立つタイプではなかったが、毒にも薬にもならないというか、いわゆる「普通の女子」だった。家庭科が得意だったか？ああ、黒板に書いた字がきれいだったな。

「お前は？」

無理にではないが沈黙を埋めるように正紀は僕に聞いてきた。