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想い出話の続き
「真山はシンガポール駐在だろ。笹垣は研修医、ああ、荒川は劇団員だってさ。」
「へぇ、良く知ってるな。」
「お前、同窓会出てるか?」
「B組はやってないんじゃないかな。」
「んなことねーよ。」
ただちに断言する正紀を不思議に思って、変な間ができた。
咄嗟に正紀は立ち上がり、勝手知ったるとばかりにカウンター向こうのおじちゃんに声をかけ、クーラーから中瓶を取り出して栓を開け、コップ二つと一緒にお盆に載せて戻ってきた。実に手際の良いさまに感心しながらも、僕は鯖をまたひと噛りした。
正紀はコップにビールを注ぎながら僕の前に置き、もう一つのコップにもビールを注いで自らの前に置いた。
僕は一口、正紀は一杯を飲み干した。
一息ついてから、正紀はこう言った。
「オレ、今、和奈子と付き合ってる。」