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いつもの彼女
ピザカッターで切り分けて、一切れを小皿に盛って冴子の方に、もう一切れを自分の方に置いた。冴子はやっぱり一回だけ瞬きをして、ピザを食べた。
僕は小皿のパスタを食べきると徐ろに大きめの音を立ててフォークを置いた。
すかさず冴子はピザから目線を動かさずにこういった。
「おいしいね。」
僕は返事に迷った。
「よく来るの?」
「いや、探したんだ。」
冴子は僕を見つめた。
「正解だったね。」
三秒間、僕は黙っていた。冴子が言葉を続けないのを確認して、こう言った。
「うん、ネットで見たよりもずっといいし、おいしいしな。」
その後、冴子はご機嫌だった。ピザもパスタも平らげ、サングリアをもう二杯、焼きなすも追加して、デザートはやっぱりティラミスで、濃い目のコーヒーも飲みきった。
他愛もないお喋りを楽しそうにし続ける冴子がそこに戻っていた。