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不機嫌な彼女
もちろん今夜もゴールドのビーンが冴子の首元で輝いていた。
冴子はまだ澄ました調子で、大きなグラスに赤のハウスワインが注がれるのを不機嫌な眼差しで見つめていた。抑制されながらも右の眉毛の先が釣り上がっていて、時折、ピクリと痙攣さえしている。
僕が思いっきりの笑顔で「乾杯」と言っても、何も言わずに瞬きを一度だけ返してくれた。
僕はそのワインを飲み干してしまった、一気に。
グリッシーニが十本ほども刺さった陶器のレースジャグを手にしたウェイターが少しびっくりしていたくらいだ。平静を装ってレースジャグがテーブルに置かれるや否や僕はこういった。
「お代わり。」