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遅刻はつきもの
丸の内に着いたとき、すでに八時を過ぎていた。
夜羽子さんの店を遠ざけて約束の店を目指したけれど、一つ通りを間違えて、大きなビルをグルっと廻って、エレベータにも待たされて、店に着いたときには八時半に近くなっていた。
入口横の椅子に掛けている人たちを尻目に、案内の人に話しかけようとしたが、前で話している人がなかなか終わらずにさらに二、三分は待ったろうか。
一悶着がやっと終わって僕の番。待ち合わせだと告げて店の中を巡り始めた。薄暗い店内は人を見分けにくく、冴子は見当たらなかった。店の真ん中でスマホを取り出すと、冴子からメッセが入っていた。
「もう帰るね。」
八時二〇分、僕はそこにへたり込むかと思ったけど、なんとかその場に立ち尽くし、一、二、三、四、五と数えた。