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イチマツできあがり
親父が風呂場のドアをパタンと閉める音が聞こえると、僕はなんだかホッとした。気を取り直してスマホを取り出し、イビツながらもなんとか形を成しているイチマツ模様の紅白蒲鉾を写真に収めた。
さて、寒椿どころか手綱や結びだって作れないだろう、というかそんな切れ端は残っていなかった。
僕はイチマツをしばらく眺めた後、ホウレン草と人参をザクザク切って、バターで炒めて、仕上げにイチマツをばらしてフライパンに放り込んだ。炒めものといえば塩胡椒?ま、バターつかってるからいいか。醤油もかけてと。
ああ、ご飯炊かなくちゃ。
そんなことしてると親父が風呂から上がって来た。冷蔵庫から缶ビールを取り出すとなるべく僕の方を見ないようにして、居間へと移動して行った。