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市松か、ああ、市松か。
ま、これでなんとかピンクと白と交互に五枚ずつならんだ。イビツだけど、まあ、並んでるよ。で、これを今度は縦に真っ二つ。うん。で、右側の手前の一枚を取って、手前に一つずつずらして、うん、う、ああ、うん。で、一番前にあった一枚を一番奥に置くと、…う、あ、ああ。なんとかなったか。
…うん。まあ、見てくれはばっちりとはいかないが、なんとかピンクと白が並んでる。
そこへ親父が帰って来た。
親父は休みの日に帰って来ると、まず缶ビールを一つ冷蔵庫に入れる。いつもの台所に今日は異質なものを見た。ああ、エプロンしている僕だよ。
しかも、なんで?という程に細いのや太いのや切れ切れの蒲鉾が散らかっている。あ、スーパーの袋や蒲鉾の包もそこいらに広げられたまま。
そんな様子を一通りじろりと見回してから一言。
「市松か。」
僕が返事をするより前に親父は缶ビールを冷蔵庫に入れてパタンと扉を閉めると、いつものように風呂に向かった。