51/1866
新年らしいお通し
で、九時に丸の内で平気だったのは和美じゃなくて健吾くんだったからで、新年早々、こんな小洒落た店に連れて来てもらえるなんて、思いもよらなかった。付き出しは河豚の煮凝りだった。ゼリー状の美しい塊には、白子も一緒に閉じ込められているそうだ。健吾くんはこうゆうことも良く知っていて、嫌味なく、そつなく、僕の興味をそそるように説明してくれた。
この冷んやりしてさっぱりした口当たりは正月らしくなくていいなあと思っていると、若い顔立ちに割烹着が少し不釣り合いな気の強そうな美しい女性が、カウンターの向こうから、ちょうど僕たちに聞こえる大きさの声でこういった。
「福を呼ぶ魚、なんです。」