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帰って行った妹は
「覚えてるのもあるけど、作れはしないよ。」
「えー?」
「えー?って言われても、作れないわよ。」
「ふーん…。」
僕は侮蔑の気持ちを強く込めた眼差しを高い位置から妹に向けてくれてやった。そして荒々しく靴を履き捨て、靴が裏返ってしまったのにも気付いていながら、そのままにして居間へ向かうという暴挙に出た。
「ちょっとぉッ!」
もう和美がなにを言おうと返事もしてやらなかった。母親のように裏返った靴をしゃがんで拾い上げ、揃えてくれているのは見なくても分かったのに。
「なんなの、あれ?」
和美は親父にぶうたれていた。
「さあな。まあ、気にするな。悪かったな。」
あれ、親父、あんな風に僕のことかばうのか?和美も同じように思ってるだろう。
「ふん。まぁ、いいや、帰るね。お父さん、身体にだけは気を付けてね。…お兄ちゃんもッ!」
分かったから兎に角気を付けて帰れと親父が言うと、和美はパタパタバタンと帰って行った。
僕は当てが外れてしまって、ぶうたれたかったかが、相手も見つからずにふてくされて、塞ぎこんだ。