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魔除け、厄除け
「…すごい、赤だね。」
ほかになんにも言うことが見当たらず、エビを見つめてやっと出てきたのがこの言葉だった。
「魔除けの朱ね。」
冴子は外を見たままだった。
「いやね、晴れやかな色だからよ。」
「黒豆は厄除けだったか?」
冴子は僕に向き直った。疚しいことなど何もないとでも言うつもりなのか。
「まめに働くって意味でしょう?」
「黒豆はね、厄除けと健康と長寿っていう三つの意味よ。」
「ふうん。」
冴子の「ふうん」は僕のそれ以上に、興味のなさを明らかに示していた。