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足止めを喰らわす
野間さんはうやうやしく挨拶だけして足早に立ち去ろうとした。あんな表情を見せた相手を引き止めるのは億劫にもなるが、そんなこと言ってる場合じゃなかった。
「ペーパードリップ式のコーヒーがうまい店、行きましょう。」
無類のコーヒー好きの野間さんの足が止まった。ここは「ペーパードリップ式」がポイント。コーヒーの旨味はサイフォン式やエアロプロス式じゃなくて、実はドリップ式の方でネルじゃなくてペーパーが「いつもどおり」のさらっとした舌触りで違和感なく味を堪能できる。マスターがカウンターでペーパードリップ式であることを見せつけてコーヒーを淹れてくれる店は、実はそうはない。