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御用聞きに廻ってみる
午後はちょっと気が乗らなかったこともあったし、担当顧客を一廻りすることにした。朝の内になんとなくメール出しといてよかった。流石にこの歳になってアポなし訪問なんてできない。とはいっても「御用聞き」はそれなりに疲れる。気も遣うし。
喫茶店があると入って休みたくなる。雑貨店みたいなのがあると弁当箱見たくなる。気持ちは常に落ち着かないし、じっくり見られないんなら見ない方がいい。後ろ髪は引かれるけれど。
あ、野間さん。
野間さんは僕と目が合ったときに実に罰が悪そうな表情をした。一瞬にして眉が八の字を描き、怪訝そうに、右側の目尻のみに深い皺が浮き上がり、痙攣でもしたかのように、引き攣るっていうのはこういうものだと示していた。こういうとき、こちらの方が申し訳なくなるのだが、しっかりと目が合ってしまったのだから無視もできない。