始まりはお節

車中にて

そして片岡と別れて、とぼとぼと電車に乗った。晩い時間の電車の中には、僕と似たような顔付きのサラリーマンたちがいた。混んではいなかったけれど、空いてもいなかった。手摺の輪っかに手を通してボーっと景色を眺める。見慣れた風景が流れて行く。郷愁も愛情も掻き立てられることはなく、ただ見ている。

あーッ、…奈都さんとこ、行きそびれた。

ふぅっ、なんだかとても疲れた。明日こそは行きたい。うん。代金だって払ってないんだから、行かなくちゃ。