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数時間が経過して
随分長い間一人で考え事をしながら呑み続けていたらしい。他のお客さんたちの喧騒が頭の奥の方でぼんやりと響いていた。奈都さんの笑顔が時折垣間見えた。
奈都さんは見かねながらも僕に話しかけることはできず、やっとの想いをこらえきれずにか、注文してもいないお茶漬けを出してくれた。
「どうぞ、鱧と梅干しのお茶漬けよ。」
炊き込みご飯のように見えたのに、奈都さんは熱〜いお茶を注いでくれた。
「鱧と梅干しのお茶漬け?こっちにも!」
「ハイ、ただいま。」
ああ、しまった。奈都さんは僕に気を遣ってくれたばかりにさらに忙しくさせてしまった。
それでもお茶の香りは芳しく、すでに空腹は満たされていたのに、茶漬けをかき込まずにはいられなかった。