134/1866
母の一喝
「やめなさい!」
由香里が一喝すると、女の子はピクリとも動かなくなった。僕は、自分が女の子の足をジロジロと見ていることを注意されたのかとビクリとした。
「風邪?」
由香里は自らの一括をなかったかのように、優しい眼差しで僕に尋ねた。
「んー、熱がね…。」
「一条さん!」
「ハイッ!」
先生に呼ばれると由香里はすっくと立ち上がり、目の前の女の子の背中を小突くようにして診察室へ向かった。扉を開けるすんでのところで、僕の方に振り向いた。
「ありがとうね。」