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気がかり
由香里は小さい女の子の肩を後ろから掴んでいた。女の子は由香里の膝に背中をもたせかけたまま、歩行の練習をするようんい両足をバタつかせていた。由香里はそんなことをなんともなさ気に自分に話しかけてくるのが不思議だった。しかも、僕とは昨日も会ってたといった空気さえ漂わせていた。
「ああ、少し前に。」
由香里は遠くを見るような眼差しで、僕に語りかけているとは思えないように呟いた。
「そっかー、やっと…ね。」
「…うん。」
熱のせいか、それ以上のことは言えなかった。
その後由香里は怒涛のごとく凄い勢いで語り続けた。由香里自身も僕にどう言ったらいいのか分からなかった、誰もが分からなかった、なんとなく過ぎてしまった、きっかけがなかった、でも小雪の気持ちも、和奈子の気持ちも、それから正紀の気持ちだって大事にしたかったとかなんとか。
僕はただ黙って聞いて、時折うんうんと頷くしかなかった。そうするのがやっとだった。
まくしたてる由香里よりも、女の子がバタバタさせ続けてる足が気になった。