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やっと診察
「須藤さん!」
嗄れた声だけど、しっかり聞こえるんだよな。ハッと目を覚まされて、とぼとぼと診察室へ移動した。
先生と向い合って座るのは何年振りだろう。相変わらず冷ややかな眼鏡には一点の曇りもなかったけれど、決して冷たくはないんだよな。ボーっとしながらもなんとか声を発した。
「喉痛くて…」
「口開けて。」
先生は僕の口の中を器具を使ってみた。僕の後ろには若い看護師さんが立った。
「あーって言って。」
「…あ゛ー。」
うまく言えなくて、なんだか恥ずかしい。看護師さんもいるし。
「赤くなってるね。咳は?」
「…少し。(コホコホ)」
先生が僕の喉を見た器具をトレイに置く音で、僕の声は掻き消されそうなくらいだった。それに聞かれると出るんだよね、咳が、少し。
「熱測った?」
僕が口ごもっていると先生はなんだかデジタル体温計みたいなものを僕の首のあたりにかざした。
「結構あるね。温かくして、食事はしっかり取って。喉の薬と、風邪薬三日分出しとくから。」
いつもながらの単調な診察だった。