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夜の羽の女の子
普通のお客さんには説明しないんだけれど、僕がまた来たときに入り口でがっかりする顔は見たくないからって、奈津さんはそんな言い訳をしながら教えてくれた。
「きっと、蝶になったんですね。」
酔っていたんだろう、僕は。闇夜に羽根を広げて、羽ばたいて行ってしまったんでしょう、あの羽の女の子は、なんて言いながら、僕自身、寂しそうな笑顔を浮かべてしまっているかなと不安になった。
けれど奈津さんは優しい笑顔を浮かべて頷いてくれた。
そして僕は足早に最終電車へと向かった。