些細な誤字から
ヤマギワ商事の高橋さんは決して悪い人じゃない。けど、話が長い。そして大半が愚痴である。
いいよいいよ、今日は。この後は夜羽子さんのお店に行くんだから、じっくり話を聞こうじゃないか。あ、ほかの仕事が進まないなあ。ま、明日でいっか。
高橋さんは眉が右側の眉が大きく釣り上がっていた。見積書の些細な誤字が気に入らなかったらしい。きっかけはそれだけのことだけど、今の今まで気が付かなかっただの、こうして話していても悪びれた様子が見られないだの、実は以前の見積書でも同じような誤りがあっただの、これによってモチベーションが下げられ、他の社員のつまらないミスにつながっただの、誤発注が起きた場合はああだのこうだのって、…こうなるともう止まらない。
いいさ、なんでもスキなだけ文句言ってくれよ。こうやってふんふんと聞くよ。
いやいや、なめてなんかないですよー、真剣に受け止めてますよー。気をつけますって、二度と誤字がないように、まぁ、間違えちゃうことは誰にでもあると思うんですけどねー。
もちろん大事なお客様ですし、常に最新の注意は払っているんですよぉ。当然じゃないですかあ。