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パワーストーン 守護石

作者: 奈多来 日和

とある休日。私は暇つぶしにそこらの土産物店で買った鉱石発掘キットで遊んでいた。もういい大人であるが偶には童心に帰ってみるのも悪くない。

「あ、ハズレだ」

二十分程黙々と砂の塊を掘っていた私は、ちらりと姿を見せた石の色を見て、落胆した。その石は黄緑色だったのだ。ダイヤモンドを狙っていた私としては残念でならない。

「よし、捨てるか」

これ以上掘るのも面倒だったので、とっとと捨てることにした。ゴミ箱に向かって振りかぶったところで、

『ちょっと待ちなさいよ!!』

と、砂の塊を持った手の内から声が聞こえた。気づいたら石の辺りに妖精っぽいのがいた。黄緑色の服を着て、背中の羽をパタパタとはためかしている。某夢の国の妖精かよと思ったが、私は口にはしなかった。

「えっと、何?」

『私はこの石の守護精・ペリドットよ!』

ドヤ顔で言い切られた。私は聞かなかったことにして、砂の塊│(石入り)をゴミ箱に投げ入れた。妖精?がぎゃあぎゃあ言っているが、気にしない、気にしな……

『拾わないと毎日枕元に立って世の絶筆作品を聞かせ続けるわ。強制的にね』

「話を聞こうじゃないか」

絶対に終わらない話を聞かせられるとかどんな拷問だ。気になって眠れないじゃないか。

私は取り敢えず砂の塊│(石入り)を机の上に置いた。

「で、何の用?」

『貴方、ダイヤモンドじゃないからって途中で捨てるなんて酷すぎない?』

「文句言われても……」

『それに、ペリドットだってそれなりの価値はあるのよ』

「え、いくら?」

『お金じゃないわよ、パワーストーンとしてよ!』

「私、そういうの信じてないんで……」

『私│(守護精)がいる、ってことで信じなさい!』

いや、そもそもそれも自称であるが。

守護精│(仮)はドヤ顔を止めない。

『とにかく、この石、つまり私にも力があるのよ!パワーストーンとしてね』

「え、どんな?」

『そうね、例えば1度だけ持ち主を守ったり、とか……』

丁度その時、私の脳天目掛けて硬式野球のボールが猛スピードで飛んできた。私に当たる直前、ピキィ……という音がしたと思ったら、ボールは私から逸れて何処かに飛んでいった。

音がした方を見ると、砂の塊の中の石がひび割れ、守護精│(仮)が消えかけていた。

「えっと……」

『私が力を使えるのは一度きり……。貴方の命が救えて良かったわ……。短い間だったけど……楽し……か……』

「私の身体、超合金なんだけど」

私は進んだ科学技術によって作られた、所謂サイボーグなのだ。あの程度のことではかすり傷にもならない。

『そん、な……』

守護精│(仮)は目を見開いたまま、消えていった。後には砂に塗れた、割れたペリドットだけが残った。私はそれらを捨てた。

無為な一日だった。

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