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Sec.1-2「Always alone,but,"Encount"」

「最後にともだちと遊んだのなんか、いつだろうか?」


第二話です。人によってはちょっとグロいかもしれないところがあります。

「っ、ヒイ、はぁ、ハア、」

どれくらい走っただろうか・・・。

息切れでのどが痛い。足がもつれそうになるところを近くの電柱を支えに持ちこたえる。

今いるのは、学校の門前を横切る坂を下って行った先の商店街。本当はまんま「港名坂商店街」というけど、一番東側に名鉄の駅があるから、通称「駅前の商店街」。

東西に広がっていて、道は車が横に2台通れるかぐらいの細さ。そこまで人通りは多くないが、小さいお店がいくつも連なっていて、シャッターが降りているのは少ない。

文房具屋さん、駄菓子屋さん、総菜屋さんといろいろあって帰りの高校生には人気の場所だ。

だがあたしの現在地は駅と反対側の方向。


-怖かっ、た。


まだ足が震えている、膝が笑っている。

あの女子の目は明らかに普通とは言えなかった。なんていうか、人のそれとは何かが違うような。

そして、あのときつかまれた右の二の腕がまだじんわり痛い。どんだけ強くつかまれたんだ・・・。

下を向いていたので軽い鞄が肩からずり落ちる。

布と鞄のひものこすれる音に混じって、チャリ、とくぐもった鈴の音がした。


「・・・あっ」


逃げるのに必死すぎて完全に存在忘れてた。




歩いて行ったからいつもより時間がかかった。

ようやく商店街のもっとも西側の突き当たり-よく目立つ石造りのでっかい鳥居の下につく。

古い石の階段を数段と、ゆるい参道を上がれば、こぢんまりと、だけど歴史感のある境内が現れた。

ここ、比呂阪ひろさか神社があたしの落ち着く「家以外」で唯一の場所。

春と秋のお祭りや年末年始以外、ほとんど人が来ないから放課後にここへいつも一人のんびりしている。

しかしながら鳥居が目立つのに一番奥にあるから「見えているのになかなかたどり着かない」場所でもある。

「今日も少しだけ居させてください」

境内の方に軽く参拝すると、古いお賽銭箱の裏に置いてある竹ぼうきで周りをさっと掃除。

それから、すぐ横の東屋に腰掛ける。

「あ゛~~~~~~」

鞄を横に放り置き、思いっきり伸びる。

桜の花びらがはらはら舞い、青い木々の風に揺れる音だけが響き。

やっぱ・・・落ち着・・・くn「おねーちゃん」


「ん!?」


夢の中へご案内される直前、高い声があたしを現実へ強制カムバック。

「なんだあ・・・」

せっかくいい気分だったのに・・・。

「あ、起きた~」

軽く目をこすって声のした方向を確認。

「誰だ・・・?こんなとこ来てもなんもないよ??」


いたのは赤いランドセルを背負った女の子。


背の高さ的には、小学1年生?かな?

二つ縛りのおさげにくりくりした目、黄色いワンピース。

・・・あたしにもこんな時代があったのだろうか?

「ねーねー、おねーちゃん、遊ぼうよー!」

「うん!?」

ちょっと待て。

「いいでしょ?わたしいまつまんないの」

「いや、その、あの」

これは本気で困った。誰かと遊ぶとか・・・はっきり言って、10年ぶりなんだけど。

「ごめん、あたし、遊ぶって言っても何したらいいかわかんない」

「え・・・?」

女の子は首をかしげている。

「というか、あたし極力他人とかかわりたくない。ごめん、だから、ほかの人と遊んで」

そもそもなぜこんな人のいないところに来るんだ。商店街なら人いるだろうに・・・。

「いやだ!アヤ、お姉ちゃんとがいい!!」

「はあ!?」

なんで!!???

「お店があるとこのほうが人いr「イヤ!お姉ちゃんじゃなきゃやだああああああ!」

女の子(ナチュラルにアヤ、といってた)はわんわん泣き出してしまった。

いやいやいやちょっと待って、どうし・・・・


「・・・な、」


泣くアヤちゃんの全身からどす黒い-靄?みたいなのがあふれている・・・!?


「わわわ!?」

こんなの、明らかにおかしい!!

あたしがパニクっておろおろしている間に、靄はアヤちゃんを覆い隠していく。

間違いなく、これは、やばい!!

アヤちゃんの手をつかむ、

「痛っ!」

が、靄のせいかはじかれた。

「うっ、わ・・・」

しかも、アヤちゃんをつかもうとした右の手のひらが-血まみれになっている。

さすがに痛くて動きが止まってしまった。

そして、靄がアヤちゃんを完全に覆ってしまった!




「あそビタい、アそびたい、ああアあああアアアあああ嗚呼あ!!!!!!」




ノイズがかった高い泣き叫ぶ声が頭に響く-脳をシェイクされて、るみた、いにぐ、るぐる・・・

「くっ・・・っつあア・・・・!」

頭と手の激痛であたしはしゃがんでしまった。

しかしそこをこらえて顔をあげると、


「なにこ・・・れ、」


アヤちゃんを覆った靄は黒い木のような腕が左右合わせ4本生え、靄の中心では血のような赤が吊り上がる目と不敵なスマイルの口を形作っている。

いつかのテレビのCMで見た、ゲームのラスボスみたいなヤバい顔。

もももモンスター??いや違う、ここはファンタジーじゃありませんただの郊外の港名坂市の小さな神社-



「おおおおおおオオオオオ多おお乎嗚!!!!!!」



そのモンスター(仮)がえらい速さでこっち来たっ!!

立ち上がりたいけど、だめだ頭痛い!

というより襲われるほうが先だわ、あ、これ詰んだ、死んだ。

黒い腕がもう目と鼻の先、

ああ。

高校2年初日にまさか死ぬとか、




ちっくしょハル兄に朝の仕返しできなかった-










「ブッ飛べエェェェっ!!」






ドゴオオオオォォォン!!!



「!?」

衝撃はあたしに来ず、なぜか東屋から響いた。しかも、なんかが壊れたような轟音つきで。

「あ、生きてる!弘、間に合ったぜ!!」

『よっしゃ、そのまま救出からの撃退よろ!!』

あたしより低い、また別の女子の声と、さらに低くてノイズじみた男子の声が後ろからした。

ていうか、頭にガンガン響いて痛い。

「大丈夫か?」

いきなりあごを上に向けられた。だから、痛いって。

「・・・あなたは、」

あたしと同じ、港名坂学園高校の制服。だが緑のリボンはほどけてネクタイの縛り損ねみたいになっている。

夕日に照らされた癖のある短い髪、に反して長い前髪を彼女は手早くかき分け、微笑んだ。

つり気味の大きな目は、力強い。



「うちは東香里あずまかおり。とりあえずあいつ倒すからちょっと下がってな」


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