Sec.1-1「New class,and,"Start"」
それでは本編です。
誤字脱字ありましたらご指摘くださると幸いです。
ご意見等々も大歓迎です。
「はあ、はあ、・・・つらっ」
行きの通学ルートは圧倒的に上り坂が多い。へこたれそうになったが、一度もチャリから降りることなくなんとか学校についた。
あまり高い建物の多くないこの近辺で、白い5階立ての校舎はよく目立つ。
無駄にきれいなアーチ型正門をくぐり抜け、すぐ左側の自転車置き場に到着。
ちょうど、予鈴が響いた。
ほんとにぎりぎりだったな!っと内心焦ってチャリをいつものポジション-置き場の一番奥へ止めた。
そのまま青い砂の(これまた無駄に広い)グラウンドを直進。目の前には校舎が「凹」の字型に建っている。
出っ張った校舎の左が港名坂学園中学校、右が高等学校になっている。
2つの校舎の間のへこんだ部分には、図書室とか実験室とかの中高共同で使う特別教室がはいっている。
さらに、中学校側の手前に体育館、高校側の手前にはプールがあり、一通りの施設はそろっている。
で、プールの横を通り過ぎた先に、高校の昇降口。
そこにはもう新しいクラス発表がはりだされている。
紺のブレザー、白いワイシャツに緑のリボンの女子や、同じ紺色ブレザーに緑ネクタイの男子の人だかりから喜びの声やら残念がる声がしたが、あたしの知ったこっちゃない。
たかが1年、友達と同じクラスになれなくったって、別に死ぬんじゃないんだし・・・。
―ともだち、ね。
学校生活11年目、学力は目立たない程度にまあまああるし、運動も音痴ではない程度にまあまあできる。
現在は、いわばごくごく「普通」の女子高生だ。
人だかりがある程度動いたので、貼り出しに近づいて自分のクラスを確認。
「2年C組 13番 榊原夏希」
・・・まあ、こんなものか。
誰も待つことなく、さっさと下駄箱へ足を進めた。
2年生の教室は4階。1年のときは3階だった。そして来年は最上階の5階になる。
この学校、私立なのになぜエレベーターがないんだ。中高一貫なんだし、それくらいのお金ありそうなのに。と、長々階段を上る。
ホームルーム開始までわずかだったこともあってか、C組についたときにはほとんどの席が埋まっていた。
初めの席は出席番号順。ええと、3列目の・・・
・・・んん?
あたしの席と思しき机の正面に鎮座するは―教卓。
え、最初から先生のど真ん前、通称「ロイヤルボックス」?
何それ、まーたしばらく「ちょっとどんな感じ」って先生にノート見られる率跳ね上がるの?
うわぁーついてなさすぎる。
しかしなってしまったものは仕方ない。あきらめて投げるように鞄を置く。
と、同時に校内放送を知らせるチャイムが鳴る。
「9時から始業式が始まります。2年A組から順次体育館へ移動を開始してください」
・・・これからまた1年、いつもの学校生活が始まる。
頭がさびしいことになっている校長先生の長ったらしい話を適当に聞き流し、
担任発表でC組はこれまたさびしい頭の(決してHAGEと言ってはいけない)森岡というおじさんになったが気にもせず、
戻った教室でそのさびしい頭の担任のこれから話を上の空でスルーし、
配られたプリントを受け取り、回収するものを後ろから回してもらいまとめて先生に渡し・・・
「では、明日から授業が始まるから気を抜かないように。さようなら」
「さよーなら」
「ら」を言うか言わないかのところで、超速ダッシュで教室から逃げた。
人がいっぱいいるところはどうも長居したくない。小さい頃からそうだ。
その代わり、ほぼ毎日欠かさず行くところがあった。
今日もまた、その場所へ行くべく階段を駆け下りる。
あたしにとって、落ち着くのは家とあの場所しかないから・・・
「ねえ、そこの貴女?」
「っつ、何!?」
2階と1階の間の踊り場で誰かに右腕をつかまれた。
かなりの速さで駆け下りていたので突然勢いが止まり、危うく落っこちそうになる。
恐る恐る確かめると、腕をつかんでいたのは同じ制服の髪の長い、おとなしそうな女子だった。上靴には青いライン-あたしと同じ2年生か。
でも、あたしはこの人知らない・・・。話したことないし、友達とかもっとない。
そもそもこの学年だけでAからEの5クラス、約200人いるから、全員の顔がわかるほうが無理がある。
「だ、だだ誰ですか、何の用で、すか・・・?」
あんまりにもびっくりしたから、声が裏返りまくっている。
「貴女は知らない?この学園に噂となっている怪奇-”港名坂学園高校の七不思議”のこと」
彼女はゆったりした高くかわいい声で・・・なんかよくわかんないことを言い出した。
・・・コウメイザカガクエンコウコウノナナフシギ????
「ふぁっ?!!ななな何ですかそれ!?」
ナニナニなにソレ??七不思議・・・学校によくつきものだけど。ここにもあったんだ。
「知らないのかあ。じゃあ教えてあげるよ」
「え、ちょっと、あたしいそいd」
どうせお決まりの階段の数とか音楽室の肖像画の類とみて速攻退散・・・できなかった。
つかまれた腕が離せなかった。むしろつかむ力が強い、って
「痛い痛い痛い!」
「ご免なさい。でも人のはなしは最後まで聞いて?」
ぐい、っと無理やり引き戻される。
「・・・!」
顔の血の気が引いた感覚がした。
彼女と目が合った瞬間、突然恐怖がした。脳裏で警鐘が響いている。
このひとといるのはなんかまずいきがする-
だけどつかまれてはなれられない-
「私が噂に聞いたのはその中の七つ目だけなんだけどね」
な、なんか勝手に話が進んでいるんですが。しかも七つ目ってだいたいよろしくないものと聞いている。
「その名も”神隠しの屋上倉庫”と言うそうよ」
「神隠しの屋上倉庫・・・?」
なにそのオカルトチックな倉庫は。
でも確かに高校側の校舎の屋上には隅っこにちょっとした倉庫、らしきものがひとつだけあった。
ここの学校に入学してから、昼の時間にいつも人除けとして屋上はお世話になっているから、よく目にする。
・・・まあ今まで見たことしかないし、別に変な感じはしなかったけど。
「そこ、こんな風に噂されているの。
-そこの倉庫は、特定のある時にしか開かない。
だけど開けたら最後、開けた人は二度と帰ってこない」
「・・・そんなの、初めて聞いた」
この校舎に通うのは今日で4年目なのに。
「でしょうね。ほんとひそかに流れているから」
「・・・もう行っていいかな」
いやな予感がしてならない。早くこの場から去りたかった。
「あら、急ぎでしたね。ご免なさい。もし気になったなら調べてみたらどうよ?」
「・・・、まあ、気が向いたら」
ようやく腕から圧力が消え、本当に逃げるように彼女の近くから去る。
「・・・・生きテ居たラ、ね?」
「え!!??」
階段を降りかけた足が止まる。
即座に振り返った。
が、踊り場にはさっきの女子はいなかった。
「・・・っ、」
怖くて、頭が真っ白になって、ただ足が壊れたように走りだした。
なんなの、今の-?
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「また ひ とり こっち に おい で?」
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