ANOTHER WOLD
初投稿です。
長文失礼しますが、
どうか気長に、そして笑顔で読んでいて下さい。
怖い顔出しで読まれても、不気味なだけですので。
「あと一人! あと一人!」
観客席から歓声が飛び交う。観客の様子は歓喜に満ちていた。ピッチャーの関谷がキャッチャーの倉田のサインを確認する。倉田は迷わずカーブの合図を出した。
球が放たれる。 バッターはカーブを読んでいるかのように、バットを短く構え、完璧に関谷のボールをとらえたのが分かった。
「まずいっ! 打たれ・・!!」
「カキィィィィン!!!!!!」
打たれた球はしっかりと軌道に乗り、弧を描くようにこちらの方に飛んできた。
「レフトォ!!」
コーチの声が聞こえたのもつかの間、波打つ緊張のせいか、球がどこにあるのかさえ分からなかった。
「!!!!!!!!」
球が見えない。そんな球など捕れるはずがない。
かろうじて捕球体制になるものの、見えないボールは既に僕の頭上を超えていった。
「ウォォォォ!!!!!!」
一斉に相手チームの観客席が歓喜に包まれる。ようやく僕も後ろにボールをそらした事に気付き、慌てて後を追った。
「おい、そこの・・・12番!! 何やってんだてめぇ!!」
観客席から罵声や怒号が響く。その声に押し潰そうになりながらも、なんとかボールのところへ辿り着いた。
「ホーム!ホーム行けるぜ!!回れ!!!」
やばい、逆転される。 既にランナーは三塁を蹴っていた。迷っている時間はない。一か八か、決死の思いでバックホームをした。鼓動が高鳴る。どうか間に合いますように・・
「パシッ」「ザザア」
球を捕球した音とスライディングで土を滑る音がほぼ同時に聞こえた。その後少しの沈黙の後、一斉に歓声が響いた。
(どうか、サヨナラだけは・・・。)
そんな思いで顔を上げた。しかし、その瞬間、ぼくは驚愕した。
「もう終わってんだよ。こんなクソ試合なんかよぉ。」
なんということだ。ピッチャーの関谷が僕の投げたボールをカットしていたのだ。関谷は僕の顔を見るなり、軽蔑するように笑い、見下していた。
「・・・おい、てめぇ、何カットしてんだよ。あのままホームに返球が届いていれば、もしかしたら勝ってたんじゃねーか。」
僕は思っていることを率直に言ってみたが、関谷は笑っていた。
「バァァァカ。レフトにいったとき、お前の足取りを見て、一瞬で無理だ、って思ったんだぜ。一瞬で。」
「おい・・・てことは倉田も・・・」
「そりゃあそうだ。あいつなんかグラブ外して待ちくたびれてたぜ。」
関谷が僕に向かってボールをぶん投げた。あまりに至近距離で反応ができず、脇腹にボールが当たった。俺はさすがに我慢できなくなり、思いっきり振りかぶった。しかし、投げようとした右手を背後から抑えられた。倉田だった。
「倉田、てめ・・ グァッ!!ちょっ、何すんだ!!」
「だまれ、12番。馴れ馴れしい口聞いてんじゃねーよ。だいたいテメェのせいで・・・」
「ちょっと君達!早く整列しなさい!」
関谷は、僕を睨んで一度舌打ちし、早く並べ、と言って歩いていった。
あの・・・続いちゃいます。
できるならば続編も読んでくれれば幸いです。