ヌヴェル44 恋文 胸に残りし大切の言葉
掲載日:2026/09/26
女は、恋文をしたためた。
かのときに
言いそびれたる大切な
言葉は伝えられぬまま
時は過ぎて行きました
いま想えばそれはもう
他愛もない拙い言葉
聞けばあなたは笑うでしょうか
笑顔を見せてくれるでしょうか
かのときに
言いそびれたる大切な
言葉はやがて色あせて
時は朽ちてゆくのでしょう
女は、恋文を四つ折りにし白い封筒に入れた。
宛先は書いていない。
差出人も書いていない。
真っ白な封筒。
来る日も来る日も、女はそれを郵便ポストに投函する。
誰にも届かない恋文を。
参考 石川啄木 作短歌 かの時に言ひそびれたる大切の言葉は今も胸にのこれど




