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風の契約と絆を紡ぐ物語  作者: 蒼燈
森の精霊と村の昔話
6/19

6争い

フードの男たちは、ためらいもなく足を踏み入れた。


「今日も痕跡は残っているな」


「精霊の気配が濃い。記録しておけ」


 低い声。

 金属の棒の先が、淡く光る。


 狼が、牙をむいた。


 背中の毛が逆立ち、

 地面をかきながら一歩前へ出る。


(近づいてほしくないんだ……!)


 ステラは思わず前へ出そうになるが、

 ゼフに腕を軽くつかまれる。


「ゼフ……!」


 小さく首を振られた。


「まだ、だめだ。動きを見る」


 男の一人が、袋から何かを取り出す。


 灰色の粉。

 それを、丸い円を描くように撒きながら言葉をつぶやく。


「精霊封じの輪を作る。入ってくるなよ、怪物」


 狼が踏み込もうとした瞬間——


 ばち、と火花のような光。


 見えない壁にぶつかり、

 狼は苦しそうに身を引いた。


「やめて……!」


 ステラの口から思わず声が漏れた。


 男たちが一斉に顔を向ける。


「誰だ!」


 ゼフが一歩前に出て、

 あくまで落ち着いた口調で言う。


「旅の者だ。森で道に迷った」


 男は眉をひそめる。


「夜の森に入るとは無用心だな。

 ここは危険だ。村へ戻れ」


 その間にも、

 別の男が地面に器具を突き立て、

 淡い光を記録している。


「精霊反応、上昇中。中心は——」


 言い終わる前に、狼が跳んだ。


 精霊封じの輪の外側をぐるりと回り込み、

 男の腕をかすめる。


「っ……!」


 袖が裂け、器具が地面に転がった。


 男は舌打ちし、低く言う。


「やはり危険な存在だ。

 支配される前に、対処する」


 棒の先が強く光る。


(だめ!)


 ステラは剣に手をかける。

 でも、ゼフの声が静かに響いた。


「ステラ! 焦るな。見ろ——あいつは、攻撃してない」


 よく見ると、狼は器具だけを狙い、

 男たちの体には噛みつこうとしない。


 まるで——

 この場所を、荒らさせないように。


「退くぞ」


 先頭の男が短く命じた。


「今は情報が足りん。

 報告して、次の指示を仰ぐ」


 彼らは素早く道具を回収し、

 森の奥へと消えていく。


 狼は追わなかった。

 ただ、低く唸り続けている。


 静寂が戻る。


 ステラはそっと近づきかけ——

 その足が止まった。


 狼の瞳が、まっすぐこちらを見ていた。


(……近づくな、って言ってる)


 ゼフが小さくつぶやく。


「“ここから先は危ない”。そう言ってる顔だな」


 狼は、森の影へと溶けていった。


 残されたのは、えぐれた地面と、

 かすかな金属の匂い。


 ステラは唇をかんだ。


「……あの人たち、ただ畑を荒らしてたんじゃない」


「ああ。精霊を調べている」


 ゼフの声は静かだった。


「けど、誰の命令かは——まだわからない」

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