表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
風の契約と絆を紡ぐ物語  作者: 蒼燈
魔法の祭典と嵐の予兆
16/20

1 にぎやかな街

森を通り抜け、丘をひとつ越えると、視界が一気に開けた。


遠くに、太陽に照らされた大きな街が広がっている。

魔法都市イルミ。

人と精霊が共に暮らしている街。

赤茶色の屋根がぎゅっと集まって、その上に細い塔が何本も伸びている。

塔の先に掲げられた旗が、風を受けてパタパタと揺れていた。


「……わあ」


気づいたら、ステラの口から声がこぼれていた。


街の周りには白い城壁があって、その前の道には、人が多く歩いている。

荷車を引く商人、旅の冒険者、大きな荷物を抱えた人たち。

それぞれが笑ったり、急いだり、誰かと話したりしている。


空気そのものが、少しあったかい。


横でゼフがふっと笑った。


「にぎやかだな。静かな森とは、だいぶ違う」


「……うん。なんか、こういう明るい場所……少しだけ胸がそわそわする」


ステラは自分の胸に手を当てる。


不安、だけど少し楽しみ。

はっきり思い出せないのに、この景色だけは懐かしいような気もした。


街の門が近づくにつれて、音がどんどん増えていく。


鐘が鳴る音。

誰かが笑う声。

遠くで奏でられる笛の音。


そして──どこからか、甘い匂いがふわっと漂ってきた。


「なんか、甘い匂いするね」


「うん。お菓子の屋台っぽいな。砂糖を焦がす匂いだ」


ステラのお腹が、小さく鳴った。

ゼフに聞こえていないことを願うステラ。

でも、


「ステラ。あの屋台のお菓子、食べるか?」


そのゼフの一言で、お腹の音が聞こえていたことがわかり、恥ずかしさで顔が少し赤くなるステラ。


「……食べる」


「じゃあ、買ってくるよ」


ゼフが屋台にお菓子を買いに行き、二人分買って帰ってくる。

少し炙って溶けた砂糖が乗っているクッキーはおいしかった。


「おいしい」


「そうだな。これが食べれたのはステラのお腹が鳴ったおかげだ」


「……ゼフ。そういうの、よくないと思う」


「そう?」


ゼフがイタズラっぽく笑うと、ほんの少しだけ風が吹いた。

ステラの髪がふわっと持ち上げられる。


「ちょ、ゼフ……!」


思わず髪を押さえて、ステラはむすっとした顔をする。

でも、すぐに小さく笑った。


色とりどりの布で飾られた道。

魔法で浮かんでいる光の輪。

呼び込みの声と笑い声。


まるで世界そのものが、明るくなったみたいだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ