番外編 甘い贈り物
旅の途中で立ち寄った街で。
「なんか、甘い匂いがするね」
「そうだな」
二人の言う通り。
街中でチョコレートなどのお菓子を売っている店が多く、甘い匂いが漂っていた。
不思議に思った二人は、近くの店の店員に理由を聞いてみる。
すると、「バレンタインだからね」と言われた。
「⋯⋯バレンタイン?」
「そうだよ。仲のいい人や、感謝を伝えたい人にお菓子を渡す日。
お姉さんも一つ、隣のお兄さんにどうだい?」
ステラは少し考えた後、チョコレートが六個入った箱を一つ、買うことにした。
綺麗にラッピングされたチョコレートの箱。
人があまりいない所に行き、ゼフに箱を渡すステラ。
「はい、あげる」
「いいのか?」
「うん。いつもありがとう」
普段はあまり言われない感謝の言葉。
その気持ちが嬉しくて、自然とゼフの顔に笑みが浮かぶ。
「ありがとう、ステラ」
その夜。
チョコレートを食べようと箱を開けたゼフ。
星型、猫の形、花の形⋯⋯。
かわいい形のチョコレートが並んでいて、なんとなく恥ずかしくなるゼフだった。
季節が過ぎ。
今日は、街の雰囲気がいつもより明るい。
にぎやかで、楽しそう。
「⋯⋯今日は、何の日なんだろう」
首をかしげているステラに、ゼフが箱を差し出す。
さらに不思議そうな顔をするステラ。
「なに?」
「今日は、ホワイトデーだ」
「⋯⋯何をする日なの?」
「バレンタインのお返しをする日だな」
「バレンタイン⋯⋯。何かしたっけ?」
自分がチョコレートを渡したことを、本気で忘れている様子のステラ。
少しして、はっと顔を上げる。
「あ。ゼフにチョコ、あげたんだった。それのお返し?」
「ああ。忘れてたのか?」
「今思い出した。ありがとう、ゼフ」
ステラは嬉しそうに箱を受け取った。
「⋯⋯どういたしまして」
さっそく、箱を開けるステラ。
中には、ホワイトチョコとクッキーが入っていた。
「⋯⋯おいしい」
「なら、よかった」
「ゼフにもあげる」
「一応、俺からのプレゼントなんだけど」
「⋯⋯別に、いいでしょ」
頑なに引き下がらないステラ。
ゼフは小さくため息をつきながら、ステラが持っているクッキーを受け取った。
お菓子を食べながら、二人のホワイトデーはゆっくりと過ぎていった。




