番外編 ステラの心配クッキング
日が落ちて、あたりが暗くなってくる頃。
野営をしているステラとゼフは、料理をしていた。
木を集めて、火を起こす。
二人はそれぞれ、役割分担をしていた。
ステラは火の番。
ゼフは料理を作る。
ゼフは慣れた手つきで野菜を切っている。
それを見ていたステラは、ふと思った。
いつもゼフが料理をしてくれている、と。
なら、今日は手伝いたい、とも。
「ゼフ。私も、手伝うよ」
「……いや、いい。あと、この野菜を切るだけだから」
ゼフは少し早口で申し出を断る。
しかし、ステラにも食い下がれない理由があった。
「でも、いつもゼフが料理してくれるでしょ。今日は、私がやる」
自分の気持ちが伝わるように、じっとゼフの目を見つめる。
その圧に負けたのか、小さくため息をついてから困ったように笑うゼフ。
「わかった。最後は、ステラに任せる」
「ん、任された」
ゼフと場所を入れ替え、腕をまくるステラ。
気合は、十分だった。
近くで、ゼフは不安そうに見ている。
その理由は、すぐに分かった。
最後に残った野菜は、にんじんだった。
硬く、あまり包丁が入っていかない。
「かたい……」
少し勢いをつけてにんじんを切ろうとする。
その時、指が少し切れた。
「いっ……」
「ステラ! やっぱり、止めたほうがいい」
指の手当てをしながら止める。
このままじゃ、ゼフの迷惑になるかも。
そう思ったステラは、にんじんを切ることは諦めた。
でも、それ以外ならできる。
はず。
そう信じて、次はスープの味付けをしてみる。
「あ」
手が滑って、砂糖を多く入れすぎてしまった。
味見をしてみると、とても甘くなっている。
慌てて塩を入れて味見をすると、今度は逆に塩辛くなってしまった。
「ステラ」
「う……」
ゼフの静かな声に、びくっとするステラ。
ゆっくり振り返ると、優しい顔をしているゼフと目があった。
「あとは、俺がやるから」
「うん……」
とぼとぼと歩き、火の番に戻る。
少しすると、ゼフが完成したスープを持って近くに座った。
「はい。こっちがステラの分」
「……ありがとう」
一口、飲んでみる。
さっきの失敗は、なんとなく残っているように感じたけど、おいしかった。
「ちょっとしょっぱいな」
「ううん。おいしいよ」
「そうか?」
「うん」
黙々とスープを飲むステラ。
その姿を見て、ゼフは疑問に思った。
「なあ、ステラ。さっき、なんで急に手伝うって言い出したんだ?」
「あ、えっと……。いつも、ゼフが料理をしてくれてるから。今日は、私が作ろうかなって、思ったんだけど……」
ステラはいつもの無表情から少し眉を下げ、小さく笑う。
「手伝うつもりだったのに、逆に迷惑かけちゃった」
少し悲しそうにしているステラ。
でも。
ゼフにとって、その手伝おうとする気持ちが嬉しかった。
「……ステラ。ありがとう」
「……なんで?」
「なんか、嬉しかった」
「そう、なの? ゼフが嫌な思いしてなくて、よかった」
二人で、笑い合う。
こうして、穏やかに夜は更けていった。




