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【ラグ・コード】〜 不遇能力『遅延実行』で物理法則のバグを突き、逆境すらも攻略(ハメ殺す)。解析屋の少年と多くの仲間たちと共に、バグった世界を「正解」へと導く物語 〜  作者: Kaいト
エピローグ:孤独を揺らすは、重き残響

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第九話 残光

激闘の果て、砂塵の向こう側に残されたもの。

「……おい、解析屋かいせきや



舞い上がった砂塵がゆっくりと地表に落ちる中、膝をついた獅子堂ししどうが顔を上げた


右腕の『パイル・バースト』は過負荷により、キンキンと高い冷却音を立てて陽炎かげろうを放っている



「お前、さっき……俺の過去を知ってるような口ぶりだったな。何を見た」



れんはエイジャスの媒体を抱えたまま、瓦礫の山に背を預けて座り込んでいた


鼻から流れた血を袖で無造作に拭い、自嘲気味に笑う




「……何も。ただ、お前の戦い方が効率が悪すぎただけだ。自分の命を、誰かへの贖罪みたいに使いやがって。……エイジャスのログの向こう側に、そんなお前の『バグ』が透けて見えた。それだけだ」



「……はは、バグか。違いねぇ」



獅子堂はようやく震えの止まった右手を強く握りしめた






彼の脳裏には、今も消えない「残光ざんこう」がある



――あの日、世界を壊した『大崩壊』

獅子堂がいた街は突如出現した高負荷区こうふかくに飲み込まれた



そこは世界の法則が乱れ、「熱」の概念が暴走した地獄だった


至る所で噴き上がる火柱、崩れ落ちる街並み。




「烈、お前だけでも逃げろ! 振り返るな!」




幼い自分を出口へと押し流した必死な大人たちの手


自分を生かすために、彼らがその身を焼かれながらも道を作ってくれた光景


視界を埋め尽くした、どす黒い赤色



救われた命ではなく、誰かの犠牲の上に「残された」命




その強烈な光の記憶が、烈にとっては消えない呪いとなっていた。







だが、今。目の前の男は、その「過去の重荷」を理屈抜きで、共に背負うと言ってみせたのだ



「……おい。お前の名前、まだ聞いてなかったな」



漣は少しだけ意外そうに目を見開いたが、すぐにいつもの冷淡な、けれどどこか柔らかな表情に戻って答えた


「……九条漣だ」



「漣か。……なあ、漣。さっきの、相当キツかったろ。……悪い。俺が一人で背負おうとしてたもんを、お前にまで持たせちまった」



「……計算外の負荷だ。二度とやりたくない」



「だよな。……なあ漣。これからも隣にいてくれよ。お前が道を作って、俺がブチ抜く。お前が隣にいるなら……俺も、少しは自分の命を大事にできる気がするんだ」



漣は少しだけ面食らったように瞬きをした


そして、ふいに関係のない方向へ視線を逸らすと、少し照れくさそうに口を開いた



「……効率を考えれば、そうなるな。お前ほど頑丈な……ふっ……武器なかまは、他にいない」



烈は不敵に笑うと、レバーを引いてパイル・バーストを背中へ固定した



「よっしゃ! これから俺のことはれつと呼べ!! その方が『仲間』らしいだろ?」



そう言って、無骨なグーを漣の目の前に差し出した


漣はどこか嬉しそうな吐息を漏らす

そして、自分の拳を烈のそれに、静かに、だが確かな力強さで合わせた




(コツン、と乾いた音が二人の間で響く)





その瞬間、漣の脳内を支配していたエイジャスのノイズが、嘘のように静まった気がした



かつて孤独な「解析屋かいせきや」と、死に場所を探す「特攻兵(何でも屋)」だった二人の境界線が、その一撃で消えてなくなった




結局、棄界の情報はあの激闘のせいか...はたまた元より無かったのか...

棄界へ続く直接的な手がかりを掴むことはできなかった



その後二人は地下室から避難者を救出し、地上へ戻った



廃墟の向こう、地平線に沈みゆく夕日の「残光」が、戦場を鮮やかに照らしている




烈の背中で冷えゆく重機の熱と、空に溶けていく静かな赤い光


かつての烈にとって、この赤い光は絶望の象徴でしかなかった



だが、隣を歩く漣の足音を聞きながら仰ぐ今日の光は、不思議と温かく、彼の背負う重荷を少しだけ軽くしていた





しかし、その光の中で漣は、手元のエイジャスが捉えた不穏な波形を見つめていた


「……烈、やはりおかしい。棄界の境界に、外側から抉じ開けられたような『強制干渉』の痕跡がある」


「干渉?」


「本来なら交わらない座標が、意図的に直結させられていたんだ。……何者かが、あの特異欠落体に一般人をぶつけて、何かを測定しようとしたのかもしれない」


「……はは、考えすぎだって、漣。そもそも、そんな手の込んだ真似して、あの人らを怪物にぶつけるメリットなんてどこにもねぇよ。」



烈は歩みを止めず、隣で可笑しそうに肩をすくめた



「……まあ、何かの副作用でたまたま繋がっちまったとか、そんなとこだろ」


「……副作用? 」


「まぁ何だ、こういうのは理屈じゃねぇんだよ。……結局、真相なんてのはあのノイズの向こう側だ。誰にも分からねぇよ」



烈はそう言って、前を向いて歩き出す



「分からないものは、分からない」。そう笑い飛ばす潔さが、逆に烈の良さなのかもしれない




「…………。うーん、じゃあこれは一体……」



漣は答えの出ないパネルを見つめ、小さく唸った


沈みゆく太陽が残したわずかな光芒が、仲間となった二人の足跡を、暗い荒野へと長く伸ばしていた

最後までお読みいただきありがとうございます!


第七話、タイトルの『残光』。

烈にとって呪いだったあの日、そして漣が背負った世界の敵という宿命。

二人の孤独が夕闇の中で溶け合い、ようやく「漣」と「烈」として拳を合わせることができました。


「お前が道を作り、俺がブチ抜く」


最強のバディが誕生した瞬間に、エイジャスが捉えた不穏な「影響」、「強制干渉」とは何なのか。




獅子堂シシドウ レツ

• 過去:『大崩壊』の際、高負荷区で発生した「燃焼概念の暴走」に遭遇。自分を逃がすために盾となり、燃え尽きていった大人たちの姿がトラウマ(残光)となっている。「生存者の罪悪感」から、他人の助けを借りることを「死の肩代わり」と恐れ、孤独な特攻を繰り返していた。


追記アペンド火場馬力リミットラッシュ

• 肉体のリミッターを強制解除し、火事場の馬鹿力を無理やり発動させる。

• 発動後、体は一定時間が経つと耐えられなくなり、全身痛み始め動きが鈍くなる。


獅子堂はこの弱点を解放率を調整することで軽減化させている(もちろん追記の全力を出すことができなくなるが)

• 真髄: 武器が自壊するほどのエネルギーを、自らの肉体で「力ずくで抑え込む」ことで、本来ありえない出力を引き出す。


専用武装:可変式重機籠手『パイル・バースト』

【外観】

肩から手先を完全に覆い、先端が地面に届くほど長大な青い金属と重機パーツの混成体。手で保持するための堅牢なグリップ構造を持つ。


【変形機構】

1. 貫徹形態パイル・モード

• 構造: 3つの外部シリンダーが展開し、中央から極太のロッド(杭)が突き出した「最長」の形態。

• 運用: 烈の全エネルギーを「一点」に集中。対象を物理的にブチ抜き、内部から破壊する。


2. 空爆形態バースト・モード

• 構造: ロッドを内部に引き込み、3枚の装甲プレートが中央へスライド。射出口を完全に塞ぐ「三角形の蓋」を形成した形態。

• 運用: 獅子堂が『追記:火場馬力』で「蓋を力ずくで押し留める」ことで、内部の爆発エネルギーを限界まで圧縮。接触の瞬間に逃げ場を失った全エネルギーを「三角形の面」から高圧衝撃波として爆発的なエネルギーを解き放つ。



【新技】

1. 二重遅延デュアル・ラグ

エイジャスを介して「二つの異なる事象」を同時に保留ラグ状態にする超高等技術。

漣自身もアドレナリンがドバドバと出ていた、所謂「ゾーン」だったからこそ出来た技



【新要素】

確定事象の上書き

今回の場合、特異欠落体が持つ「絶対に防げない」「絶対に再生する」という世界のルールに対し、観測と解析によって生じた『情報の空白』を突き、物理的にルールを書き換える行為。

情報の空白とは、外傷を負う→その外傷を無かったことにする→元より外傷を負っていない

このプロセスの中で生じる書き換え中の時間のこと。つまり、WEBページを更新するときにちょっとの時間白い画面になるじゃん。それと同じ


で、漣たちはその更新中に書いてある内容の大半を書き換えたってこと。そしたら上のプロセスが崩壊するでしょ(書き換える、つまり「0」の状態にしたんだから、何を掛けても「0」だよねってこと)


特異欠落体とくいけつらくたい

• 特性: 棄界から漏れ出した「???」が実体化したもの。今回の場合、瓦礫やゴミなどを取り込んだ個体


【次回の更新告知】

本日、夜19:00頃に

第十話「解析屋の新メンバー!!そして...」を更新します。


ピザと、黒猫と、新たな門出。

激闘の後の穏やかなひととき。しかし、その裏では「秩序の守護者」が静かに動き出していた……。

第一エピソード、堂々の完結。最後までお見逃しなく!


もし少しでも「続きが見たい!」と感じていただけたら、

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