第六話「不協和音の残熱」
理屈を壊す、圧倒的な「物理」の到来。
高負荷区の空気は鉄錆の臭いとデータの焦げ付いた異臭が混ざり合い、呼吸するだけで肺を焼く
その死の静寂を暴力的な衝撃音が粉砕した
「よっしゃあああ! 待たせたな、デカブツ! 今日の俺は、最高に熱いぞ!!」
砂塵を切り裂き、咆哮と共に現れたのは身の丈を超える巨大な「鉄の塊」を担いだ男だった
男がその重機を叩きつけるたび大気がひしゃげるような轟音が響く
まるでこれからの戦闘を心底楽しんでいるかのような高笑い
その瞳は獲物を前にした獣のように爛々と輝いていた
漣はエイジャスを構え、目の前の「異常」を即座にスキャンした
その直後、エイジャスの広域センサーが想定外の結果を二つ弾き出す
・一つ目
普通のパイルバンカーだと思っていたが...あまりに構造が違いすぎること
衝撃を逃がす機構が皆無であり、全負荷を『内部に封じ込めている』構造になっているのだ
・二つ目
特異欠落体の背後にそびえる、今にも崩れそうな半壊ビルの奥深く
そこから「微弱な生体反応」が検知された
(……生体反応? バカな、こんな高負荷区に人が迷い込んでるのか!?)
このエリアは物理法則がバグに侵食され、一般人なら立ち入ることが禁止されている無縁の場所だ
「...え? なんでこんなところに人が……! おい!! そこに誰かいるのか!?」
漣の鋭い問いかけが戦場に響いた、その瞬間だった
男の顔から享楽的な余裕が鮮烈に消え失せた
「……ッ!」
男は反射的にビルの隙間を凝視し、喉を震わせる
それは先程までの狂乱とは正反対の悲痛なまでに真っ直ぐな救助者への叫びだった
「……もう大丈夫だ!!俺は高負荷区の 『何でも屋』の獅子堂。依頼は『全員救出』、今すぐこいつをブチ抜くからそこでじっとしてな!」
漣がエイジャスで解析した通り、獅子堂と名乗る者が持つ「パイルバンカー」は普通のものとは違った
獅子堂のみが扱っている、まさに専用武装!!
専用武装:可変式重機籠手『パイル・バースト』のグリップを指が食い込むほどに握りしめた。
普段の彼なら「人当たりのいい何でも屋」として笑ってみせるのだろう
だが今、そこにあるのは、自分を追い詰めるような凄絶な焦燥だった
「解析屋! 手を出すなよ! 誰も...もうこれ以上は『焼かせねぇ』……!!」
獅子堂が地を蹴った
その瞬間
「『追記』
『火場馬力』、解放率30%!!」
足元のコンクリートは瞬時にひび割れ、リミッターを外した彼の加速は、漣の目では捉えきれなかった
獅子堂は特異欠落体の懐へ猛然と突き進み、パイル・バーストの先端を敵の結晶装甲へ押し当てた
「空爆形態、起動ッ!!」
カチリ、と射出口が閉鎖される重厚な金属音
能力によって極限まで引き上げられた獅子堂の怪力が、逃げ場を失い内部で膨張し続ける爆発圧力を力ずくでその鉄塊の中に封じ込める
獅子堂の咆哮と重機の軋み
暴走する『熱』と『圧力』が一点に凝縮され、解き放たれる直前の静寂が戦場を支配した
最後までお読みいただきありがとうございます!
突如現れた「何でも屋」の獅子堂烈。
豪快な笑みの裏に隠された、悲痛なまでの救助への執念。
彼が担ぐ狂気の重機『パイル・バースト』が、確定事象を誇る特異欠落体に突き立てられました。
「もう、焼かせねぇ」
その言葉に込められた意味とは。そして、合理主義の漣はこの「熱すぎるバカ」とどう向き合うのか。
追記、火場馬力
• 肉体のリミッターを強制解除し、火事場の馬鹿力を無理やり発動させる。
• 発動後、体は一定時間が経つと耐えられなくなり、全身痛み始め動きが鈍くなる。
獅子堂はこの弱点を解放率を調整することで軽減化させている(もちろん追記の全力を出すことができなくなるが)
• 真髄:???
【次回の更新告知】
本日、夜18:00頃に
第七話「空回る善意」を更新します。
自爆寸前の咆哮、振り下ろされる死の拳。
絶体絶命の瞬間、漣が導き出した「物理法則の書き換え」とは...
少しでも「獅子堂、熱い男だな!」「パイル・バーストかっこいい!」と感じていただけたら、
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