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【ラグ・コード】〜 不遇能力『遅延実行』で物理法則のバグを突き、逆境すらも攻略(ハメ殺す)。解析屋の少年と多くの仲間たちと共に、バグった世界を「正解」へと導く物語 〜  作者: Kaいト
エピローグ:孤独を揺らすは、重き残響

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第五話 未定義の門出(後編)

お待たせいたしました!


知略の極地、そして...『ラグ』の真骨頂

解析屋:九条漣、プロとして魅せる『高負荷区』の渡り方をぜひ堪能していってください!!

高負荷区の空気は鉄錆と焼けたオゾンの入り混じった、鼻を突くような臭いがした



一歩踏み出した瞬間


肺を押し潰すような圧倒的なプレッシャーがれんを襲う



「……ッ、マジか...高負荷区の『重圧』が...」



ここでは物理法則が文字通り「バグ」を起こしている



数歩先では重力が二倍になり、その数センチ横では無重力になる


不用意に踏み込めば体中の血管が破裂するか、あるいは天高く放り出されるかの二択だ


 

漣は震える手で、父の形見である解析機『エイジャス』を起動した




「『デバッグ・スキャン』……っ!」




エイジャスの画面に不可視の重力断層が網目状のワイヤーフレームとして映し出される



漣はその「安置」を縫うようにして折れ曲がったビルの影を進んだ





だが、この世界のバグは地形だけではない





「ギ、ギギ……ッ」


瓦礫の影から全身がノイズの塊と化した化け物、欠落体けつらくたいの群れが這い出してきた


その数、およそ二十



「……低負荷区しか知らずに育っていたら、今頃パニックだろうな」




「でも...!」



漣はエイジャスのダイヤルを急旋回させ、周囲に浮遊する巨大なコンクリート片に狙いを定めた




「『遅延実行ラグ・コマンド』——対象、指定座標の全瓦礫、および俺の慣性」




カチリ、と心地よい金属音が響く



漣が空中へ飛び出すと同時に、本来なら落下するはずの瓦礫が空中でポーズボタンを押したかのように静止した



漣はその瓦礫を足場に、まるで透明な階段を駆け上がるようにして虚空を移動する




「ギ、ガアアッ!?」




重力の変化に対応できない欠落体たちが、一斉に空高く「落下」していく


彼らにとって、この一帯の重力はすでに反転しているのだ



しかし、前の重力を「保持ラグ」した瓦礫の上にいる漣だけは、その影響を受けない




「……解析屋かいせきやを舐めるなよ。実行エンター!」




漣がボタンを押し込む


ラグを解除された瓦礫が反転した重力の加速をまともに受け、巨大な質量弾となって空中の敵へと降り注いだ


体力の尽きた欠落体は塵のように消えてゆく


敵の重力を利用して敵を圧倒する。知略による環境利用戦法だ!!





さらに奥へと進む...



道中、不自然に切断された鉄骨や「まるで巨大な杭で打ち抜かれたような」巨大な穴が壁のあちこちに空いていることに気づく




「……? 誰か、先にここを通ったのか? 追記アペンドの痕跡じゃない。もっと、こう……力任せな暴力の跡だ」




不気味な違和感を覚えながらも、進む足を止めるわけにはいかない





やがて、道は広大な吹き抜けの廃墟へと辿り着いた


階下を見下ろすとそこには地鳴りのような音を立てて蠢く、数えきれないほどの欠落体の「海」が広がっていた



「まともに相手をしていたら、棄界ヴォイドに着く前に脳が焼き切れるな」



漣はエイジャスの処理能力を頼りに、周囲に散らばる鉄骨とコンクリート片に一斉に干渉した




「全出力、座標固定。俺の道を作れ……『遅延回廊ラグ・ランウェイ』!」




カチカチカチッ、と連続して物理ボタンを叩く


本来なら存在しない「空中の道」が数十個の瓦礫の固定によって一瞬で形成された


漣は背後から迫る敵の咆哮を無視し、虚空に固定された瓦礫の足場を全力で疾走する。



「ギガ、ガアアアッ!」



地の底から這い上がろうとする無数の腕



だが、漣の速度は止まらない


次の一歩を踏み出す瞬間に新たな足場を固定し、通り過ぎた瞬間に解除して背後の敵を巻き添えに崩落させる




「追いつけるかよ。この世界は、もう俺の『計算内』だ」




大量の敵を完全に置き去りにし、漣は吹き抜けの最奥、さらに深い階層へと飛び込んだ






世界の崩壊は深刻さを増していく


地面に落ちている石ころに触れれば感触が「苦味」に変換され、空の色はデータの欠落を意味する空白へと変わり始めている




やがて、道は巨大なすり鉢状の広場へと辿り着く




そこには周辺の廃車や電柱、崩れたビルの鉄骨を磁石のように吸い寄せ、情報の濁流と共に無理やり継ぎ接ぎした、山のような『欠落体』が鎮座していた



それはもはや生物の形を成していない、ただの欠落体でもない...


まさに『特異欠落体』とでも言うべきだろうか




無数の鉄屑が、意思を持つかのように蠢き、軋み、巨大な鎧へと再構成されていく


その中心核から漏れ出すノイズは周囲の空間そのものを歪ませ、視界を赤黒いバグで塗り潰していた




「……っ、こいつ、装甲そのものが『確定事象』になってやがる……!」



エイジャスの干渉すら無慈悲に弾き返す、圧倒的な存在の重み




「確定事象」

それは、もはや物理法則のバグ(ゆらぎ)さえも許さない、絶対的な現実として固定されている状態のこと




世界そのものが敵の存在を正解だと認め、その巨体を守護しているかのような錯覚


その絶対的な「重み」を全身に浴び、漣の思考が、体が、恐怖で凍りつく




特異欠落体はそれを絶好の機と見たか。情報の濁流を纏った巨大な拳が逃げ場のない死の衝撃となって振り下ろされた



「しまっ……!」



回避は不可能。防壁の構築も間に合わない


漣が死を覚悟し、奥歯を噛み締めたその時!!





「ぉーおーおー、いいの見っけ! さてさて、こいつは『何発』で沈むかな?」




霧の奥から場違いなほど明るい声が響いた




直後、空から黄金色の閃光が降り注ぐ




右腕に巨大なパイルバンカーを携えた男が『特異欠落体』の分厚い装甲を小細工なしの「物理」でブチ抜く音が響き渡った



「よっしゃあああ! 待たせたな、デカブツ! 今日の俺は、最高に熱いぞ!!」


それが漣と.....、相容れない二人の力が交差する、始まりの音だった。

最後までお読みいただきありがとうございます!


【次回の更新告知】

明日、12:00頃に、

第六話「不協和音の残熱」を更新します。


ついに交錯する二人の力。波乱の幕開けをお見逃しなく!


もし今回の漣の活躍、そしてラストの乱入にワクワクしていただけたら、

ぜひ下の【☆☆☆☆☆】評価と、ブックマークで応援をお願いします!

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