静かなる大戦へのカウントダウン
初めて画像挿入使った。めちゃくちゃ便利やん!!
今回の話は地区名が多めな分、画像を活用しながら読み進めるとより没入できると思います
ーー今回以降から、度々地名や地区名が登場しますが 実在のものとは一切の関係はありません
雨に煙る夜。
煌びやかな高層ビル群から遠く離れた打ち捨てられた廃ビルの一室。
そこで凛たちは潜伏していた
「......まず 凛さんだっけか。初めましてだな。俺はタイガ。後ろにいる実働部隊の長だ」
巨躯を揺らして歩み寄った男......タイガが 獰猛な笑みを浮かべて親指で背後を指す
「旧栄区の用心棒をやってた。見ての通り力仕事担当だ。よろしくな。そしてこいつが......」
「テツだ。よろしくねッ!」
ヘラヘラと軽い調子で手を振るのは テツ。
「『天導区』の通信局をクビになった......あーいや 逃げ出してきた天才ハッカー様さ。電子戦なら僕に任せてよ」
「....私はシノ。あんまり喋ると舌を抜くわよ テツ」
冷ややかに言い放ったのは 背中に巨大なナイフを背負った女 シノだ。
「『鋼殻区』で機械いじりをしてた。精密な解体が得意なの。それから 私とテツはこの工作部隊の部隊長よ。よろしくね」
「うん。よろしく...」
三者三様の挨拶を 凛は赤く濁った瞳で見つめていた
――もう、誰も傷つけたくない
その想いだけが 胸の奥で重く沈んでいた
タイガがその空気を断ち切るように 端末を開き 映し出された地図の心臓部を指差した
「よし 本題の作戦会議からだな」
映し出された地図に 漣たちが住む低負荷区。
『低負荷区ーー新京都』という檻の形を浮き彫りにした
「まず現在地だ。今いるのは緩衝区の赤い点のところだな。ここから旧栄区や中央区へ 一気に攻め上がる。あとはそのまま天導区や商栄区へ攻めるだけだ」
タイガの指先がなぞる場所には 琥珀色の光点が標的として灯っている
「でも それじゃ目立ちすぎるし 標的が遠すぎるよ。普通に静穏区から一気に天導区へ行った方が早くない?中央区班、旧栄区班、天導区班の三つに分けてさ」
アキが自分の端末に映し出された画面をスワイプしながら そう提案するがタイガは反論する
「贅沢言うな。静穏区の高級住宅街には 俺たちネズミの入る隙なんてねぇんだよ」
ナインが吐き捨てる。
「だが アキの言うことも一理ある。天導区......あのバカ高い電波塔が並んでるエリアは 特に点が多い。情報戦の要だし 早めに潰しておきたい」
それに続けてシノも話し始める。
「南東のゴミ捨て場周辺......旧栄区は 意外と少ないね。五つか」
タイガが拳を鳴らす。
「これなら俺一人で十分だ。あとは 緩衝区もな。元は俺の庭だったんだ....掃除は慣れてる」
「まだ決めるの早いですって! ほら次 新京都のど真ん中ーー中央区は.....え?これ本当? 一つしかないけど......」
アキが困惑した声を上げた
都市の心臓部
そこに灯る琥珀色は たった一点
「罠か それとも精鋭が固まってるか。まぁど真ん中にあるんだ 嫌でも通ることになる」
誰も、次の言葉を続けなかった
その沈黙を切るように ナインが口を開いた。
「........北東の天導区は広すぎるわ。ここは人数が必要ね」
シノが冷静に分析を口にする。
「ええ。さらに北の繁華街......商栄区は 点が二つしかない。ここは少人数でいいでしょうね」
「でもさ 問題はその上にある工場地帯....鋼殻区だよ」
テツが震える声で画面を指差す
「あそこは狭いのに拠点が10個も密集してる。警備も厳重だ。注意が必要だよ」
「それを言うなら 住宅街の方もだよ」
アキが釘を刺す。
「閑世区は静かすぎて 少しでも暴れればすぐに治安維持局の軍隊が来ちゃう...」
「工場地帯なら大きな音を出してもバレないけれど 下手に爆発させたら街ごと消し飛ぶわよ」
シノがナイフの鞘を弄びながら 凛の方を見た。
「精密に かつ確実に殺せる奴が向いてるわ」
「......うん そうだね。ここは私が行く。あと中央区も。多分、一番手慣れてる」
部屋の隅
凛がゆっくりと顔を上げる
琥珀色の光が 彼女の赤く濁った瞳を無機質に照らした
「……凛、お前さん、一番の激戦区になるであろう『中央区』から『鋼殻区』までを一人でぶち抜く気か?」
「うん。私の追記.....そして今までの経験から 適任だと思う」
「……いいだろう、お前の『壊し屋』としての腕を信じるぜ」
タイガが不敵に笑い、地図上の琥珀色の点にそれぞれの名前を叩き込むように上書きしていく
「よし、配置を固めるぞ。耳かっぽじってよく聞け!」
• タイガ:【緩衝区ーー旧栄区ーー天導区へ】
「ゴミ捨て場の掃除は俺が引き受ける。緩衝区と旧栄区の点は俺一人で十分だ。それが終われば 天導区へ俺も加勢する」
• テツ & シノ + 工作部隊 + 実働部隊:【旧栄区ーー天導区】
「いいか 旧栄区の点は俺が潰す。お前たちは広大な電波塔エリアだけに集中しろ。テツのハッキングとシノの隠密攻撃で確実に落とせるようにな。ここは一番『数』を必要とする。頼んだぜ」
• アキ & ナイン + 隠密部隊:【商栄区ーー閑世区ーー鋼殻区へ】
「静かに動かなきゃならねぇ住宅街と繁華街は、お前ら二人だ。目立たず、だが迅速にな。そして そのまま鋼殻区へ向かってくれ。点の数が少ない分、早めに終わるはずだ」
• 凛:【中央区 ―― 閑世区 ーー 鋼殻区へ】
「そして凛。お前さんはど真ん中の一点を潰した後、そのまま北の工場地帯へ向かえ。あそこの10の点を、お前の暴力で更地にしてこい」
タイガが地図のホログラムを握りつぶすように消すと、部屋の空気が一気に戦闘の熱を帯びた。
「いいか!連絡手段はこの端末だ!!敵の奇襲や危険な状況など何かあったら惜しみなく使え」
一瞬の静寂。
そして......!
「作戦開始だ!!新京都の夜を、ネズミの色で塗り替えてやるぞ!」
その号令を聞きながら 凛はただ静かに 赤く濁った瞳で雨の向こうを見つめていた
ーー鼠たちの 地上戦、開始。




