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ラグ・コード 〜遅延能力でバグった世界をぶち壊す〜  作者: Kaいト
切り捨てし飢餓、その果てに秩序は成る

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仲間は切らない、それが不合理な選択だとしても

白夜。こういう最強の証って大好き

「……これは、違う。暗号化プロトコルが古すぎる」



「……こっちも、ダメだ。去年の偽装ログを再利用しているに過ぎない。時期が数週間ずれている」



地下室の薄暗い空気の中、漣と神城の指先がコンソールの残像を残すほどの速さで踊る


神城が「鼠」のルートから引き抜いてきた膨大なデータ群

その中には、当局が意図的に流したデコイや、過去のジャンクデータが泥のように混じり合っていた。



その時、エイジャスの網膜投影が激しく明滅し、金色の火花が散った



「っ……通信障害か!? 遮蔽シールドを抜けてきやがった!」



神城が叫ぶ。

治安維持局による広域電磁パルス、あるいは「鼠」を追い詰めるための強力なジャミング


地下室の照明が明滅し、表示されるウィンドウが激しいノイズに歪む。



「……よし、これは俺が対処する。神城ジンは選別に集中してくれ」



漣は、視界をぐちゃぐちゃに塗りつぶす砂嵐を睨みつけた

相手は大きな「音」を鳴らして、こちらの「目」を塞ごうとしている


だが、漣には見えていた。



(……うるさいノイズだ。だが、どんなもの『隙間』はある)



漣は、ノイズの荒波をじっと観察した


デタラメに荒れているように見えて、ノイズの波にはわずかな「リズム」がある

漣はそのリズムを読み切り、ノイズが静まる「0.01秒の空白」を見つけ出した



(ここだ……!)



漣は指を弾き、その一瞬の隙間に自分たちの通信データを滑り込ませた


さらに、相手がぶつけてくるノイズとは「逆の波」を自分の脳内で作り、ぶつける

プラスとマイナスを合わせてゼロにするように、無理やり自分の周りだけ「静かな通り道」を作り上げたのだ



「……よし、成功だ!」



漣がコンソールを叩くと、砂嵐で消えていたウィンドウが、一気に鮮明に映し出された


ただ直したんじゃない。

相手が流しているノイズを逆手に取って、自分たちだけが見える「専用の隠し通路」をこじ開けたのだ



「……おい 漣。これを見てみろ」



神城が空中に放り出したウィンドウが、地下室の薄暗い空気を黄金色のログで埋め尽くす




そこには、第二特殊情報大隊の移送管理サーバーから「漏洩」したとされる、極秘の移送記録が並んでいた



「烈くんの……生体コード?」



凛が息を呑み、ウィンドウに食い入る

表示されているのは、特殊拘束ポッドの移動ログ


目的地は「高負荷区外縁:廃棄第09セクター」の臨時収容所



「移送中の振動ログ、ポッド内の気圧変化……データは完璧だ。当局が獅子堂烈を、より厳重な施設へ移そうとしている形跡に間違いねえ」



神城の声に、わずかな熱が混じる


だが、コンソールの前で静止したままの漣は、その黄金の奔流を冷徹な眼差しで見つめていた



「……いや、偽物の可能性も捨てきれない」



漣の低い声が、地下室の熱を奪う



「偽物……? でも漣くん、この生体波形は間違いなく烈くんのものだし、当局の署名も本物だよ!」



「だが、まだその『本物』っていう確証がないんだ」



漣はログの一点を指し示した


ポッド内のバイタルの相関図。

そこには、値の起伏が少ない 一般的なグラフが描かれていた



「烈なら、ポッドの中でただ大人しく運ばれてるわけがない。あいつなら、たとえ意識が朦朧としていても、バイタルを揺らして外部にノイズを送るなり、何かしら抵抗の痕跡を残す。……このログからはそういう抵抗の痕跡が見えない。偽物と言われてもそれを否定する材料がないんだ」



雨宮が描いた「正解」

漣を誘い出すために、烈という記号を完璧な論理ロジックで当てはめた、血の通わない創作物の可能性。



「……じゃあ、烈くんはそこにいないの?」



凛の声が震える。

その瞳には、恐怖が滲んでいた



「……もし、烈くんが、もう抵抗できないくらい弱って、ただ横たわっているだけだとしたら? だとしたら、このログが『静かすぎる』ことの説明がついちゃうじゃない!」



地下室に沈黙が降りる。

烈が 抵抗する力すら残っていないほど壊されている可能性。




行けば 罠


行かなければ、死にかけた仲間を永遠に失う




「漣。……どうする」




神城が 重い決断を促す

漣はゆっくりと立ち上がり 傍らのコートを羽織ると、エイジャスでの解析を中断した



「……行くぞ。場所は....政府の旧第三基地か」


「正気か!? まだ偽物の可能性があるのに、そんな火の中に突っ込むってのかよ!」



驚愕する神城を背に、漣は出口のシャッターへと歩を進める


その横顔には、演算者としての冷徹さはなく、ただ一点の曇りもない「意志」だけが宿っていた



「ああ、確かにそうだ。……だが、たとえ1%でも、あいつが『抵抗できないほど弱ってそこにいる』可能性があるなら、俺はそこへ行く」



漣は足を止めず、言い放った



「雨宮は、俺に『正解』を選ばせようとしている。罠を避け、効率を優先し、確実な道だけを歩くのが正しい人生だと、あいつの演算は言っている。……だが、そんなもののために仲間を見捨てる人生なんて、こっちから願い下げだ」



シャッターが重い音を立てて開き、廃棄区画の冷たい風が吹き込む



「罠だろうが何だろうが、俺は仲間を切らない生き方を選ぶ。……それだけだ」



その決断は、演算上の「解」ではない

雨宮が敷いたレールの外側へと踏み出す、漣というバグが選んだ、泥臭い「人生」の証明だった

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