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ラグ・コード 〜遅延能力でバグった世界をぶち壊す〜  作者: Kaいト
切り捨てし飢餓、その果てに秩序は成る

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38/50

泥中の呼び名

「......情報大隊 それに鎮圧大隊の別動隊」


漣の声は かつてないほど低く 掠れていた


自分が死力を尽くし 命を削ってようやく一個小隊を退けた相手

その化け物たちが 政府という組織には「大隊」規模で 幾重にも層を成して控えているという現実


(......勝負にすら なっていなかったのか)



情報の「層」の厚さ

それはそのまま 踏み潰される側の絶望の深さだ


その時 「左腕に赤が癒着した青年」が 感情の欠落した瞳を漣に向けた



「......あんた そんなに『上』が怖いのか」



青年は冷めた声で呟き 隣に座る少年の頭を無造作に撫でた



「なら......『ネズミ』にでも頼んだらどうだ」


「鼠......?」



漣が聞き覚えのない名に眉を潜めると 青年は自嘲気味に鼻で笑った



「政府のデータベースにも載っている有名人さ。旧栄区のドブ底を這い回り 禁忌の情報を売買するドブネズミ......。治安維持局ですら その尻尾を一度も掴めていない。あんたみたいな解析屋は 名前すら知らないだろうけどな」



「なるほどな。色々とありがとう 助かった」




それまで黙って漣を見上げていた少年が 服の裾を小さく掴んだ



「もう...... 行っちゃうの?」




漣は少年を一瞥し コートの襟を立てた




「ああ。そもそも俺らは政府の標的ターゲットだ。お前たちに敵意がないとしても ここに長居する理由はない」



部屋を出ようとして 漣は足を止める



「......安心しろ。お前の求める『完璧』は 俺がしっかり提供してやる」



漣はぶっきらぼうに言い捨て 隣の凛を促して部屋を後にした




立ち止まれば 雨宮の描いた「敗北」という数式が完成する


政府の層が厚いのなら その層の「隙間」を知る者にコンタクトを取る




その僅かな可能性に賭け 漣はエイジャスを極限まで回して旧栄区の闇をスキャンし始めた




その瞬間 エイジャスの網膜投影が激しい「金色のノイズ」に焼き切られた



(......なんだ!?エイジャスに....干渉している...? )



脳内に叩き込まれる ノイズまみれのパケット

最新の解析ソフトなら「ゴミ」として消去するはずの代物


だが漣の目は そのノイズの波形に隠されたメッセージを捉えた



『......解析屋。監視ドローンを連れて歩くのは 趣味じゃないだろ?』



「......ハッ 随分な挨拶じゃないか」


漣の口元に 微かな熱が戻る



それが招待状代わりの『実力テスト』だと理解した瞬間 彼の意識は加速した


虚空を打つ指先が残像を描き 網膜投影された論理回路ロジックが黄金の火花を散らして組み変わる




防壁を剥ぎ取るのではない

ノイズの奔流に身を投げ その「揺らぎ」を逆算して隠された経路を手繰り寄せる





「解けたぞ......」



解読成功。 そして 一つの座標を特定する

廃棄された地下変電所の跡地


そこに「鼠」の息がかかった仲介人が潜んでいるはずだ




















その目的地にいたのは ボロボロのパーカーを羽織った一人の男



「......解くのが早ぇな。合格だ。俺は鼠の仲介人だよ」



男は 背後の夜空を指差す

そこには政府の監視ドローンが 執拗に漣たちを追っていた



「お前は政府に監視され続けている。お前が自力で鼠の情報を仕入れて 居場所を割っちまうよりか...... こちら側から出迎えるのが得策だっていうのが ボスの命令でね」


「ボス......?」


「ああ。鼠の総帥だ。案内してやるよ」



男が 漣と凛の肩を叩く




その瞬間 視界が弾けた

物体と物体の位置を入れ替える追記――『転移シフト


凛が持つ空間そのものを跳躍させる追記に比べれば 射程も精度も劣る完全な下位互換

だが その代償は軽く 日常的に使える「ドブ底の足」としての技術



刹那 政府の突入班が廃ビルを包囲し 閃光弾を投げ込む


だが その光が弾けたとき そこには三つの空き缶が虚しく転がっているだけだった





「......鼠か。その泥臭いロジック 見せてもらおう」



胃の奥が浮き上がるような転移の感覚の中 漣は確信していた


自分たちが挑もうとしている「政府という層」を内側から食い破る唯一の牙は この奈落の底に眠っているのだと

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