再定義される終止符(チェックメイト)
ここ数日でこの後の展開見直しつつ過去の話の改稿してました...理由は何であれ遅れてすみません
「……終わったな」
狙撃手・佐久間の指が引き金を絞り切った
荻原の『理解』
山根の『共有』
本多の『封鎖』
逃走経路として描かれた空白はすべて埋まり九条漣という個体が生存できる確率は数学的に「零」へと固定された
放たれた弾丸は物理誤差を排除した最短の軌跡で漣の心臓を貫くはずだった
――だが
「...ッ!?」
佐久間が愕然と声を漏らす
漣が避けたのではない。着弾のコンマ数秒前 漣の肉体が爆発的な瞬発力で「跳ねた」のだ
それは予測でも技術でもない。全身を駆け巡る『源生』の奔流に突き動かされた理外の生存本能
着地した漣の姿を荻原の瞳が射抜く
『一点突破』
その解析視界が漣の肉体に起きている異常を即座に暴き出した
(...『源生』が 足に...集中的に纏われている...!?)
漣の脚部 その毛細血管の一つ一つまでがどす黒く脈動し過剰なエネルギーを強制噴射している
単なる暴走ではない。肉体を壊しながらもその推力を一点に集約させる狂気の制御
「なるほどな。溢れ出ているだけじゃないようだ...!」
そう 萩原は独り言をもらす
その異常な瞬発力こそが自分たちの「確定した未来」を物理的に踏み越えた原因だと理解したのだ
だが荻原の冷徹さは揺るがない
瞬発力で一度躱したところで包囲網の中にいることに変わりはない
漣は血を吐き捨てながら再び地を蹴った
物陰から物陰へ 遮二無二 だが最短の直線で移動を開始する
その向かう先は行き止まり
見上げるほどに積み重なった廃材の山に囲まれ 足元から頭上まで腐食した『廃サーバー群』が壁のようにそそり立つ文字通りの袋小路だ
「逃げ場を間違えたな 九条漣。そこは貴様の墓標だ」
荻原が再び視線を固定する
「山根! 追記連鎖――」
再び死の歯車が回りだそうとしたその瞬間
袋小路に追い詰められたはずの漣の脳裏にかつての光景がフラッシュバックする
凛と出会いピザを頬張った後の何気ない休息
エイジャスの微弱な電気で静電気の挙動を観測した時 漣は「真実」を見ていた....
指先を自身の胸へ叩き込む
「追記:遅延実行――対象、俺および纏っている源生!!」
自身の感覚系と生命エネルギーを 世界から数秒だけ「保留」する
荻原の解析視界が、一瞬だけノイズに染まった。
(……遮断、されている……?)
――合図。
その瞬間 荻原の『一点突破』が戦場に張り巡らされた「見えない線」を可視化した
漣がこれまで走り抜けてきた支離滅裂なルート
無意味に源生を擦り付けて回ったガラクタの山
そして今 彼らが立っている泥濘の下を走る腐食した送電ケーブル
(....まさか!?)
荻原が気づいた時にはすべてが手遅れだった
瓦礫の影から凛が渾身の力で手近な「鉄屑の塊」を放り投げた
それは正確に剥き出しになった主電源の「高圧回路」を直撃し粉砕する
『EMP 起動』
溢れ出した青白い電圧が行き場を求めて咆哮する
だがその奔流は霧散することなど許されない
そこには漣が走り抜けざまに塗りつけていった「源生の導線」が獲物を待つ蜘蛛の糸のように張り巡らされていた
「な...ッ!? 源生が 電気を吸ってーー!?」
山根の悲鳴
凛が壊した回路から溢れた電力は漣が引いた「源生の道」を伝い一台目の廃サーバーへと叩き込まれる
一台目の廃サーバーが爆ぜる
二台目が、それを喰らってさらに膨張する
三台目が、雷そのものに変わる
廃棄場全体が ひとつの増幅器のように唸りを上げた
「逃げろ! 全員 そこから離れろ!!」
荻原の叫びすらもはや「遅い」
極限まで高められた電力の濁流が小隊の足元に鎮座する巨大な廃サーバー群へと直撃した
『指向性EMP――発動』
閃光すら伴わない物理の絶対的な暴力
指向性を与えられ扇状に放射された不可視の衝撃波が第三小隊を「透過」した
「あ が...あ ああああああああああああッ!!!」
断末魔。
パージしたヘルメットの隙間から彼らの肺へ そして装甲の内側へと入り込んでいた「導電粉塵」
それが今 最悪の「増幅アンテナ」として機能しEMPの衝撃を彼らの神経系へとダイレクトに流し込む
バイザーが爆ぜ HUDが消滅し 神経に直結したデバイスが逆流を起こす
「...っ...ぁ...」
火花を散らすデバイス 煙を吹く山根
最強の猟犬たちは今や自分の装備の重さに押し潰され泥水の中で無様にのたうち回る
漣は一言も発さない。
ただ血を吐きふらつきながらも泥を啜る荻原の横を静かに通り過ぎる
そこには勝利の昂揚も敵への憎しみもなかった
あるのは 「最初から こうなることが決まっていた」 と言わんばかりの 解析屋としての絶対的な静寂だけだ
気づいたか?
だがそれがどうした。
あんたたちが「完璧な勝利」を確信して立っていたその場所は俺が設計した「巨大な墓標」の上だぜ
漣は一度も振り返ることなく 廃棄場の奥へと消えていった
残されたのは 不快な電子ノイズと 自分たちの信じた科学に裏切られた男たちの残骸だけだった
補足
源生の性質と遅延実行の組み合わせで 漣は数秒だけ自分自身を「絶縁」状態にしました。
そこに直列増幅された電力が流れ込んだ結果が あの指向性EMPです
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
最後までお読みいただき、本当にありがとうございます!
「『遅延実行』の使い方が美しすぎる!」
「自分の命のエネルギーすらハックの対象にする凄みに痺れた!」
……と、少しでも心が震えた方は、
ぜひ【★★★★★】での評価と、ブックマークをお願いいたします!




